2024年4月19日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2011年10月11日

 素人の大臣に野党が国会で意地悪な質問をしてくる以上、夜遅くまで大臣のために答弁資料を作る必要がある。遠くに住んだのでは、仕事ができないというのがその理由とする(素人ではなくてプロの大臣を選べ、野党は揚げ足取りの質問を止めろなど、様々な議論が出るだろうが、機会コストについて考えるための仮定であるので、ここではそのことについては議論しない)。

 都心港区の公務員宿舎をそう豪華にするわけにもいかない。国民の眼があるからだ。

 週刊誌のグラビアで港区の豪華官舎(公務員宿舎)とよく出るが、カメラマンは、豪華に見えるような写真を取るのに苦労しているはずだ。さすがの官僚も、公務員宿舎を豪華億ションの仕様で作るわけにもいかず、そのあたりで一番グレードの低い建物になる。

 ここに、多大な機会コストが発生している。グレードの低い公務員宿舎を建てて地域の地価をむしろ下げることになる。民間の高給マンション業者に国有地を高く売れば、国庫に莫大な売却益と高い土地からの固定資産税が入る(固定資産税は地方税で国庫に入る訳ではないが)。この差が機会コストである。港区に公務員宿舎を持つのは国庫にとって損である。

 では、公務員はどこに住めばよいのか。都心からの距離では変わらない台東区、墨田区、江東区などの北東側に住めばよい。港区では公務員は一番グレードの低いマンションに住むはめになるが、こちらであれば、普通のグレードのマンションに住める。場所を交換するだけで、かなりの復興予算が捻出できるはずだ。

 もちろん、公務員宿舎を管理する財務省も、このことを全く理解していない訳でもなく、地方の郊外に移転することで建て替え費用以上の売却益を出して、財政貢献するとしている。安住淳財務相も、都心3区(千代田、港、中央)の公務員宿舎を廃止と提案しているという。しかし、これまで、現実には、建て替えはあまり進んでいない。また、朝霞のような、より郊外に宿舎を建てているようで、公務員が通勤便利な所に住む必要を自ら否定しているようでもある。

 すると、財務省の目的は、公務員に便利な公務員宿舎を提供することではなくて、国有財産を管理する権限を維持していたいだけなのかもしれない。官僚が国民のために働いていないのではないかと疑われているのだが、同じ官僚仲間のためにも働いていないのかもしれない。

 通勤不便な朝霞の公務員宿舎が、なぜ槍玉に上がったかが分からないと書いたが、官僚は官僚のためにも働いていない例と考えれば、槍玉に上がった意味があるのかもしれない。


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