中東を読み解く

2019年2月12日

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 米国のアフガニスタンからの逃げ腰に拍車が掛かってきた。トランプ大統領は先の一般教書演説でも駐留米軍の半減に意欲を示したが、その一方で反政府組織タリバンとの和平交渉をがむしゃらに進めている。撤退に向け、後は“野となれ山となれ”といった感があるが、都合が悪くなれば肩入れしてきた政権を見捨てるという米国の習い性があらためて浮き彫りになった。

1月27日、カブールの軍事訓練センターで卒業式に臨んだ若きアフガン国軍兵士たち(REUTERS/AFLO)

撤退のための拙速な和平合意

 9・11(米中枢同時テロ)の報復として、ブッシュ政権が始めたアフガニスタン戦争だが、タリバンとの紛争が泥沼に陥ったまま、すでに18年が経過した。撤退の道筋を付けたのはオバマ前政権だが、トランプ政権になって一気にその動きが加速した。

 トランプ大統領は政権1年目の夏、国防総省や安全保障チームからの強い進言を受けてアフガン新戦略を発表、約4000人を増派し、駐留部隊を1万4000人規模にした。しかし、当選するずっと前からアフガンからの撤退論者だった大統領はアフガン情勢が一向に改善しないことに不満と苛立ちを強めた。

 こうした中、大統領は昨年12月、シリアからの軍撤退の発表に続き、アフガンからの部隊半減を決定した。「何千億ドルも使って部隊を駐留し続ける意味はない」という米第一主義の論理からすれば、当然の帰結だった。トランプ政権は撤退を後押しするために昨年から和平交渉を並行的に進め、先月末、カタールのドーハでタリバンと和平の大枠で合意した。いかにも唐突な合意だった。

 両者の合意は米国が部隊を撤退させるのと交換に、タリバンがテロ組織にアフガンの地を利用させないことを確約するというもの。かつてのタリバン政権がオサマ・ビンラディン率いる国際テロ組織「アルカイダ」を保護し、これが9・11につながった同じ轍を踏まないためだ。だが、拙速に合意に持ち込んだとの印象は免れない。

 トランプ大統領の部隊半減決定の背景には、アフガンにこのまま残留しても戦況好転の見通しはほとんどないという理由が大きい。米政府のアフガン復興担当機関の報告書によると、アフガン政府の支配地域は全土の54%。残りはタリバンの支配地か、両者が競り合っている地域で、政府が国土の約半分しか掌握していないことを示している。

 ガニ大統領によると、同氏の就任した14年以降、アフガン兵士、警察官の死者は4万5000人にも上っている。米兵など国際平和維持部隊の死者は72人。先月も米兵2人が犠牲になったばかりだ。タリバンの勢力が拡大したのは米部隊が地方から都市部へ展開の中心を移したということもあるが、タリバンを壊滅するという米国の当初の目論見はとっくに非現実的なものになっている。

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