佐藤忠男の映画人国記

2011年10月21日

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 「フラガール」「悪人」など、ヒット作を連発して注目のマトの李相日(イ・サンイル)監督は新潟の生まれ。日本映画学校(現日本映画大学)の卒業制作「青・chong」(1999年)が大評判になって、すぐにプロの監督になった。これからはこうして映画大学からすぐに作品を発表する映画人が増えるだろう。

『スマグラー おまえの未来を運べ』
10月22日(土)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
Ⓒ真鍋昌平・講談社/2011「スマグラー おまえの未来を運べ」製作委員会

 新作の「スマグラー」(2011年)の凄惨でしかも滑稽な暴力光景で見る人をアッと言わせた石井克人監督も新潟生まれだ。

 いっぷう変わったアクションものとして話題になっている「探偵はBARにいる」(2011年)の橋本一監督も新潟出身である。

 じつは筆者も新潟出身だが、地道にコツコツ努力するのが新潟県人の県民性だと小さいときからよく言われたものである。下積みの苦労が長くてそういうタイプの代表と言えるのが歌手の三波春夫かもしれない。三島郡塚山村(現長岡市)出身。ヒット曲を主題歌にした映画にもよく出て、腰の低い愛想のいい、いかにも苦労人らしいところを見せていた。

 渡辺謙はアメリカ映画「ラストサムライ」(2003年)で豪放な侍を演じてアカデミー助演男優賞にノミネートされ、ひきつづきハリウッドからの出演申し込みがあって、国際的なスターになり得るチャンスを手に入れた。以後、日本映画では若年の認知症を扱った「明日の記憶」(2006年)や大手航空会社の内紛を扱った「沈まぬ太陽」(2009年)など、力作大作の主役が多いし、外国映画でもアメリカの「硫黄島からの手紙」(2006年)その他、堂々たる主演で大きな役が少なくない。彼は雪国の北魚沼郡小出町(現魚沼市)の出身である。若い頃から大物と目されながら病気などで長い不遇の時を過ごしている。もう苦労は十分。さあ三船敏郎の再来となるか。

 樋口可南子は加茂市の出身。色っぽい情念が燃えあがるような役がよく、その意味で代表作は「女殺油地獄」(1992年)か。しかし寅さん映画のマドンナ役もさわやかにこなしているし、地味な役では「四万十川」(1991年)の田舎の母親も熱演している。

 三田村邦彦は新発田市出身。「必殺仕事人」の簪で敵の急所を刺す立ち回りなどで時代劇に近代的な感覚を持ち込んだが現代劇にもいい。

 新潟市出身にモデルから女優になった鷲尾いさ子がいる。「わが愛の譜・滝廉太郎物語」(1993年)ではピアニストの役でクラシックの難曲を弾くあたり、なかなかのものである。

 十日町市出身の高橋幸治はNHKの大河ドラマ「太閤記」の織田信長や連続テレビ小説「おはなはん」のヒロインの夫などで人気が出た。舞台の「風と共に去りぬ」のレッド・バトラーも当たり役だった。

 チャンバラで大物は長岡市出身の近衛十四郎(1914~1977年)である。昭和10年頃から30年以上にわたって時代劇映画のスターであり、アクの強い豪快でスピードのある立ち回りで人気があった。悪役もよくやり凄味の利いた演技を見せた。松方弘樹と目黒祐樹の父であり、息子たちはいかにも父親に似た演技をしている。

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