2024年4月20日(土)

矢島里佳の「暮らしを豊かにする道具」

2019年2月22日

和蝋燭と洋蝋燭の違い

 ところで、和蝋燭と洋蝋燭の違いをご存知だろうか。お誕生日ケーキの蝋燭や、仏壇の蝋燭など、私たちが普段よく目にして使っているのは、ほとんどが洋蝋燭。洋蝋燭の原材料の多くは石油系のパラフィン、芯は綿。それに対して、日本で昔から使われている和蝋燭の原材料は、ハゼの実から搾り取った自然由来、芯は燈心草と真綿と和紙からできている蝋燭である。最近では日常の中で目にする機会が少なく、知らない人も多いだろうが、時代劇や、お寺などでたまに目にすることがあるかもしれない。

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 洋蝋燭は安価なため、どうしても経済的理由からも身近になりやすい。しかしながら原材料が石油系のため、どうしても油分が周辺に飛び散る。お寺などで長く洋蝋燭を使い続けると、仏像などに油分が付着し掃除が大変になると、和蝋燭職人さんから聞いたことがある。その点、和蝋燭は自然由来のため、煤にはなるが、払えば落ちるというので、メンテナンスなど中長期的なことを考えると、実は経済的なのだ。

 この話を聞いた時、短期的に物事を捉えるか、中長期的に捉えるかで、経済的か否かの判断も変わるなぁとしみじみ感じた。油分でベトベトになった仏像をクリーニングする費用を考えると、和蝋燭の方がお得になるのかもしれない。それに仏像がベトベトになるのはなんだか忍びない。日々のことに追われて、目先のことだけ考えて生きていると、一見、安いと思って飛びついたら、思わず高い買い物をしている……なんてことも、多々あるのかもしれないと思った。

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 と、ここらで和蝋燭の灯りをぼーっと見つめつつ、ウィスキーを少々。和蝋燭とウィスキー、私の好きな組み合わせだ。和蝋燭の柔らかい灯りを受けたウィスキーは煌めく黄金色になる。ただただ見ているだけで美しいのだ。10年以上真っ暗闇の樽の中で熟成されて、眠りから覚める。そんなウィスキーの目覚めのアロマを感じながら、少量口に含み愉しむ。そう、ウィスキーというお酒を飲むというよりも、ウィスキーというアロマを愉しむのが好きだ。アロマに癒され、また気持ちが安らぐ。こうして、ロマンを感じ始める頃には、私の脳の回転率はだいぶ緩やかになり、リラックスしてきている。頭が疲れきっていると、ロマンも何も感じられない。

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