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2019年2月25日

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朴承珉 (パク・スンミン)

在韓ジャーナリスト

在ソウルジャーナリスト。時事通信ソウル支局記者を経て、「文藝春秋」「週刊文春」のソウル特派員。長年、北朝鮮問題をウオッチ。平壌や開城工業団地、板門店、金剛山など7回以上北朝鮮入りして取材。日韓メディアに寄稿している。

 「金正恩時代に、日本との国交正常化の代価は100億ドル以上になるだろう」。ベトナムのハノイでの米朝首脳会談を1週間後に控えた最近、会談展望についての様々な予測が出ている。国際社会の視線がハノイに集中している微妙な時期に、2016年、韓国に亡命した北朝鮮の太永浩・元駐英公使の記者会見が19日、ソウル外信記者クラブで開かれた。

太永浩氏(AP/AFLO)

 太元公使は、北朝鮮の亡命外交官としては一番地位が高い。亡命前に北朝鮮の駐英国大使館ではナンバーツーだった。昨年、北朝鮮の金正恩政権の内部実相を暴露した『 太永浩証言―3階書記室の暗号』という著書が発刊された。

 北朝鮮の核保有戦略について、自分が北朝鮮の外交官だった時、「金正恩が望んだのは、(国際社会に)"戦争危機論"を訴えて核保有国に行く」という戦略だったと述べた。これを通じて「金正恩は米国と北朝鮮の間で核戦争が起きかねないという懸念を全世界に拡散させるのに成功した」と解釈した。

 こうした北朝鮮の戦略に「17年11月、トランプ米大統領が落とし穴にはまった」とし、トランプ大統領が国連総会で「北朝鮮を完全に破壊できる」と演説したのは、米国としては非常に大きな戦略的失敗だったと、分析した。

 当時国際社会は、「金正恩という核列車と、トランプという核列車、あたかも両核の列車が向かい合って駆けつけるという国際的錯視現象が起きた」とし、北朝鮮と米国の間に戦争の危機はまったく存在しなかったと述べた。

 ところが、米国が金正恩のレトリックによる戦争の可能性に浸り、北朝鮮と米国の間で核戦争が起こる恐れもあるという憂慮を抱かせた」と、これが金正恩が望んだ戦略だったと述べた。

 太氏は、米国はベトナムでの2回目の米朝首脳会談を前に、「非核化交渉にするか、それとも核軍縮交渉にするか」というジレンマに陥っている、との見方を示した。また、北朝鮮は自分たちが持っている核について誰にも放棄するという約束も宣言していないとし、「いまだに米国がベトナム第2回目の首脳会談(実務会談)で、北朝鮮にIAEAとNPTに復帰するように要求しないことが最も憂慮される事案」と、トランプ大統領の対北交渉の姿勢に不満を示した。

 また、「もし今回の会談で北朝鮮の寧辺核施設+aに対する相応措置として、米国が何かを与えてディールをするなら、それは非核化会談ではなく、核軍縮会談に突入することを意味する」とし、結局それは、"トランプ・ドクトリン"に向かっている証拠だと述べた。トランプ・ドクトリンとは、「北朝鮮の米国に対する核脅威は米国がなくしてしまう。ところが、韓国に対する北朝鮮の核の脅威は、韓国と北朝鮮が自ら解決するというのがトランプ・ドクトリンの中核だ」と定義した。

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