2024年4月25日(木)

WEDGE REPORT

2019年2月24日

ホンダ撤退の衝撃

 英国に進出した企業の中で大きな影響を受けると見られていた自動車業界の中で、ホンダが20日に英国からの生産を2021年中に終了すると発表して衝撃が走った。ホンダは生産の撤退は英国の離脱問題とは関係なく、生産能力の縮小と世界にある工場の稼働率の向上のためだとしているが、自動車メーカーが英国からの生産終了を決めたのは初めてで、主要工場の撤退は失業につながるため、動揺が広がっている。

 自動車業界では、「合意なき離脱」になると、英国からEUに自動車を輸出すると10%の関税がかけられることになり、コストが上昇して競争力を大幅に落としてしまう。こうした事態を先読みして、ドイツBMWが小型車「ミニ」を生産する英国のオックスフォード工場からオランダに一部移管するほか、日産は英国の工場で予定にしていたスポーツ多目的車(SUV)の生産を撤回すると発表するなど、自動車メーカーでは「合意なき離脱」の備えての対応が表面化している。

 仮に英国とEUとの交渉がまとまらず、「合意なき離脱」が現実になると、企業の「英国離れ」は一気に加速するものとみられ、企業のグローバル戦略にも大きな影響を与えることは必至とみられる。

在庫の積み増し

 英国では17年には198万台の自動車を生産、輸出比率は79%もあり、EUへの輸出が53.9%(同年)を占めている。このほか、米国、中国オーストラリアなど約160カ国に輸出している。産業従事者は85万6000人いる主要産業だけに、EUへ輸出する自動車に関税が掛けられるとその影響は大きい。同年の生産台数上位のモデルは、1位が日産の「キャッシュカイ」が34万6000台、2位がBMWに「ミニ」が21万8000台、3位がホンダ「シビック」が12万2000台、4位がトヨタ「オーリス」が10万4000台の順だ。

 井上所長は企業が取るべき対策として「『合意なき離脱』に備えて緊急プランを早急に作成すべきだ。具体的には在庫の積み増し、さらには倉庫を借りて在庫を積み増す企業も出ている。長期的な視点としては、サプライチェーン(部品調達網)の組み替えや生産拠点の移転などが考えられるが、どこまでやるか経営判断としては悩ましい」と指摘した。英国には17年10月現在、日系企業が986社進出、自動車など製造業がEUへのゲートウエイという位置づけで拠点を設けている。


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