海野素央の Love Trumps Hate

2019年2月25日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「2回目の米朝首脳会談に臨む『トランプの意味ありげな発言』」です。ドナルド・トランプ米大統領は20日、ホワイトハウスで今月27、28両日にベトナムの首都ハノイで行われる2回目の米朝首脳会談について、記者団の質問に答えました。

 その中で、トランプ大統領は「意味ありげな発言」を連発しています。そこで、本稿では首脳会談を直前にトランプ大統領が発した発言の意図を分析します。

米朝首脳会談を歓迎するハノイの飲食店(REUTERS/AFLO)

北朝鮮の「地理的位置の利点」を強調するワケ

 トランプ大統領は、再三にわたって北朝鮮の「地理的位置の利点」について言及しています。今回も記者団からの質問に対して、「北朝鮮はロシア、中国、韓国の真ん中に位置し、とてつもない経済的潜在力がある」と繰り返し強調しました。北朝鮮が「経済大国になる」というのです。

 トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は、プラグマティック(実際的・実用的)に考えて行動する傾向があります。一般に、プラグマティックな思考様式を備えた人は、損得を判断基準にして「メリット・デメリット」によって動機づけられます。

 ビジネス感覚を持ったトランプ大統領は、「よく考えてみろ。地理的条件を生かして、経済的に繁栄したほうが得ではないか」というメッセージを金委員長に送り、プラグマティックな側面に訴えて、非核化の実現を図ろうとしています。「地理的位置の利点」を用いた交渉が、有効だと考えているのでしょう。

 通訳のみを同席させる「1対1」の首脳会談で、この説得方法が、実際に金委員長の心を動かすのか注目です。

「非核化を急ぐ必要はない」は交渉戦略

 トランプ大統領は、非核化に関して「急ぐ必要はない」と語りました。1回目の米朝首脳会談と同様、成果に対する期待値を下げたと解釈できます。

 ただ交渉の視点から述べると、別の捉え方も可能です。米国の交渉の専門家は、うえの発言を交渉戦略とみています。

 交渉では「欲しくてたまらない」「なんとしてでも必要」といった態度を相手に対して見せると、自分の交渉力が弱くなります。そこで、トランプ大統領は本音を隠して、「米国は急いでいない。北朝鮮が非核化の具体的な措置をとらないなら、経済制裁を緩和せずに継続するだけだ」というメッセージを発信しているというのです。

 つまり、非核化について「急ぐ必要はない」というトランプ大統領の発言は、交渉の観点から見ると、北朝鮮の非核化を加速させるための譲歩を引き出す戦略なのです。

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