2024年4月19日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年2月26日

トランプの足元を見る北朝鮮

 1回目の米朝首脳会談と相違し、トランプ大統領はかなり不利な立場に置かれています。前回の『2回目の米朝首脳会談、トランプの本当の狙い』で述べましたが、トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告が米朝首脳会談の当日、ワシントンで議会証言を行います。コーエン被告は、モスクワにおけるトランプタワー建設計画を含めたロシア疑惑、トランプ一族が経営する「トランプ・オーガニゼーション」のビジネス取引及びトランプ大統領の2人の不倫相手に対する「口止め料」について証言をすると見られています。

 しかもコーエン被告の公聴会は全米で生放送され、そこでトランプ大統領の選挙資金法違反が明らかになるかもしれません。トランプ大統領は、米国のテレビ局がこの公聴会と米朝首脳会談のどちらに多くの時間を割くのかを懸念しています。

 米ワシントン・ポスト紙によれば、コーエン被告の公聴会の後に、米朝首脳会談が開催されます。ということは、北朝鮮には米国内の政治情勢を分析しながら交渉を進めることができるというアドバンテージがあります。

 仮にトランプ大統領の選挙資金法違反が色濃くなった場合、同大統領は米国民の目先をコーエン被告の証言に関するニュースから逸らすために、ベトナムで派手な合意声明を発表する必要性が高まります。

 北朝鮮はこの機運に乗じて、朝鮮戦争における終結宣言を勝ち取るという計算をしているでしょう。いずれにしても、北朝鮮はコーエン被告の公聴会の情報をハノイにある大使館で分析しながら、トランプ大統領との取引を有利に進めていくはずです。北朝鮮が会談場所にダナンよりもハノイを強く主張した本当の理由は、ここにあったのかもしれません。

 北朝鮮はすでにトランプ大統領の足元を見ています。

  
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