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2019年2月28日

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ドナルド・トランプ米大統領は28日午後、1人で記者会見に臨み、現時点で合意文書に署名することは適切ではないと考えたと述べた。北朝鮮が全面的な制裁解除を求めてきたものの、応じなかったと明かした。

米朝首脳会談2日目のこの日、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は予定を切り上げて、共に会場を離れた。

トランプ大統領はその後、昨年6月と同様に1人で記者会見を開き、朝鮮半島の非核化に向けた合意に至らなかった理由を明かした。

トランプ氏は、金委員長は「制裁の全面解除を求めてきたが、我々はそれはできなかった」と述べた。アメリカは北朝鮮に対し、今後も制裁を継続するという。

また、北朝鮮が一部の核施設の廃棄を提示してきたが、他の核施設についても非核化を進める必要があると強調した。

「北朝鮮には明確な展望があるが、アメリカが目指しているものとは違う」と述べ、米朝間に隔たりがあったと明かした。

トランプ氏は、現時点で「何らかの合意文書に署名するのは適切ではない」と判断したという。

大統領は記者の質問に答え、「今日なにかに署名するのは100%可能だった。しかし、ともかく適切ではなかった。僕は急いでやりたいのではなく、きちんとやりたいんだ」と述べた。

一方で、金委員長が今後も核ミサイル実験を行なわないと約束したことを強調し、「私は金委員長を信頼しているし、金委員長の言葉を信じる」と述べた。

北朝鮮側はコメントしていない。

首脳会談は当初は、28日午後に「合意文書の署名式」で締めくくられる予定だった。

非核化の用意に言及

会談2日目の両首脳は、マイク・ポンペオ米国務長官と、金委員長の最側近の1人で対米交渉を率いてきた金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長と共に、通訳を交えてテーブルを囲んだ状態で報道陣を迎え入れた。

記者が「金委員長、非核化の用意はありますか」と英語で質問すると、金氏は「そのつもりがなければ、今こうしてここにいない」と答えた。すると向かいに座っていたトランプ氏は、「いい答えだ。すごい。今まで最高の答えかもしれない」と述べた。非核化に向けて「具体的な取り組みをする用意はありますか」と聞かれると、金氏は「まさに今、それを話し合っているところです」と答えた。

トランプ氏が記者団に「大きな声を出さないでください。これはトランプとのやりとりとは違うんだから」と言うと、金氏は「みんな、とても心配そうですね」とトランプ氏に声をかけた。するとトランプ氏は、「みんな心配しているし、落ち着いていますよ」と述べた。

今回の米朝首脳会談では、朝鮮半島の非核化に向けたロードマップを協議していたもよう。昨年6月のシンガポール会談では両首脳が非核化に原則合意したが、その後、具体的な進展はほとんど実現していない。

専門家たちは、金委員長が「非核化」で何を意味しているか、まだはっきりしないと指摘している。

外国人記者に初めて回答

2日朝の会談前にはトランプ氏は記者団に、「最初から言ってきたように、自分にとって速さはそれほど大事ではない。核ロケットやミサイルを実験しないというのを、とてもありがたく思っている」と述べ、現状に満足していると示唆した。トランプ氏はさらに、金委員長を「大いに尊敬している」と述べ、自分たちの関係は「とても強い」と強調した。

このとき金委員長は、外国人記者の質問に対して、「まだ早い段階だが、直感的に、良い結果が出ると感じている」と答えた。金委員長が公の場で外国人記者の質問に答えるのは、これが初めてと思われる。

委員長はさらに、自分がトランプ氏の隣にいる光景は「ファンタジー映画」のようだと大勢が思うだろうと述べた。

両首脳は2017年末の段階では、お互いを「小さいロケットマン」や「チビでデブ」、「頭のおかしい老いぼれ」などと呼び合い、「炎や激怒」などといった表現で戦争を始めると脅しあっていた。

連絡事務所設置に意欲か

28日午前の最初の会談は約30分で終わり、両首脳はホテルの中庭を側近や通訳と共に散策した。

記者団が金委員長に、平壌に米政府の連絡事務所の設置を認めるかと質問すると、金委員長は「歓迎する」と答えた。トランプ氏も、「双方向で悪い話じゃない」と述べた。

国交のない米朝間には現在、正式な対話のチャンネルがない。連絡事務所の設置は、関係正常化へ向けた第一歩になる。

記者団はさらに、北朝鮮の人権状況は首脳同士の議題になっているのか質問。昨年6月のシンガポール会談では、取り上げられなかった。この質問にはトランプ氏が「あらゆることを話し合っている」と代わりに答え、金委員長は答えなかった。

初日の27日は短い記者会見と1対1の会談、そして「交流のための夕食」にとどまった。この夕食にもポンペオ国務長官と金英哲党副委員長が同席した。トランプ大統領は夕食後、「今晩はヴェトナムで金正恩と素晴らしい会議と夕食を共にした。とても良い会話だった。明日も続く!」とツイートしている。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1100781840623751169

初日の様子は?

両首脳はまず、会場のメトロポール・ホテルに用意された両国の国旗の前で握手を交わした。

記者団を前にトランプ氏は、昨年6月のシンガポール会談は大成功だったと強調。一方、朝鮮半島の非核化を求める姿勢を「後退」させるのかという質問は否定した。

トランプ氏は、「最初の会談は大成功だった。もっと早い展開を望んでいる人もいたが、僕は満足しているし、あなた(金氏)も満足している。自分たちのしていることに納得しながら作業を進めたい」と記者団を前に話した。

トランプ大統領は金委員長を「素晴らしい指導者」だと称え、北朝鮮が経済的に「ものすごく」繁栄するのを手伝えるのを楽しみにしていると話した。

金委員長は、「誰もが歓迎する素晴らしい結果」が得られる自信があるし、そのために最善を尽くすと述べた。

また金委員長との会談に先立ち、トランプ大統領はヴェトナムのグエン・スアン・フック首相らと会談。200億ドル(約2兆2200億円)規模の貿易協定を結んだ。これにはヴェトナムの航空会社によるアメリカ製の航空機や技術の購入などが含まれている。

トランプ氏はツイートで、「ヴェトナムほど栄えている場所は、地上にあまりない。北朝鮮は非核化すれば、同じようにあっという間に繁栄するだろう。ヴェトナムの可能性は史上ほかに例をみないくらい、とてつもない。友人の金正恩にとって、素晴らしい機会だ。どういう結果になるか、間もなく分かる。とても興味深い!」と、ヴェトナムを称賛している。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1100584141274398720

28日の議題は?

両首脳は28日も、メトロポール・ホテルでさまざまな関連会議に出席する。ホワイトハウスによると、まずは45分間の1対1の会談から始まる。

「合意文書の署名式」はこうした会議の最後に行われる見通し。また、トランプ氏は午後3時50分(日本時間午後5時50分)に記者会見を開くとしている。

合意文書がどういった内容になるかは明らかになっていない。トランプ大統領は27日、休戦状態が1953年以来続く朝鮮戦争の正式な終戦宣言に至るのか質問された際、「どうなるか様子を見よう」と答えた。

北朝鮮メディアの報道

朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、金委員長が北朝鮮の平壌からヴェトナムまでの約4000キロの道のりを移動したことを、全6ページのうち4ページを使って報じ、称賛した。

同新聞は、北朝鮮国民が「限りない興奮と感動」で金氏のヴェトナム訪問に反応していると報じ、金氏が「帰国した際に勝利の報告ができるよう」さらに一生懸命働くよう促した。

労働新聞はさらに、金氏が海外訪問で不在になっていることで不眠に陥る市民もいると付け加えた。

北朝鮮の国営・朝鮮中央テレビに対し、金氏がいなくて「本当に寂しい」と話す女性もいた。

なぜ再び会うのか

2回目の米朝首脳会談では、昨年6月のシンガポールで行なわれた会談での合意内容の土台作りをするものとみられる。

シンガポール会談では両首脳が朝鮮半島の非核化に原則合意したが、具体的な進展はほとんど実現していないし、その後も外交上の成果はほとんど出ていない。

それだけに両首脳は今回、具体的な前進と言える結果が求められていることを重々承知しているだろう。

しかし、トランプ大統領は24日夜、周囲の期待値を下げようとするかのように、北朝鮮の非核化を「急いではいない」と述べた。

ホワイトハウスに各州知事を招いた大統領は、「誰も急がせたくない。ただ実験をしないでほしいだけだ。実験さえしなければ、我々は満足だ」と演説した。

米政府はこれまで、北朝鮮が先に核兵器を手放さなければ、いかなる経済制裁も解除しないとの姿勢を固持している。

なぜヴェトナムなのか

色々な意味でヴェトナムは理想的な開催地だ。アメリカと北朝鮮の両方と外交関係があるだけでなく、かつては長年にわたりアメリカと敵対関係にあった。それだけに米政府としては、対立を乗り越えて協力しあう事例として強調することができる。

思想的には、ヴェトナムは北朝鮮と同じ共産主義国だ。近年のヴェトナムの経済成長は目覚しく、共産党の一党独裁が続く中でもアジア有数の成長株だというのが、金委員長にとって好材料だと言える。

なぜ北朝鮮はこれほど孤立しているのか

北朝鮮は1948年の建国以来、金一族三代に支配されてきた。

国民に対する深刻な人権侵害が指摘され、国連は「体系的で広範で甚大な人権侵害」のもとに国民は暮らしていると批判している。

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金委員長は父親の死後、2011年に国の最高指導者になると、叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の処刑を命じるなど、軍や政府幹部を次々と粛清し自分の地位を確立したと言われる。

韓国の国家安全保障戦略研究所によると、北朝鮮では2012年から2016年にかけて、軍や政府の幹部約140人が処刑された。

経済は厳しく統制され、政府が必要な資金を軍と核開発計画に注ぎ込んでいる一方で、国民の間では食料や燃料など生活必需品が不足している。

報道や情報も国家が徹底的に統制している。NGO「国境なき記者団」の世界報道自由度ランキングは、北朝鮮を最下位に位置づけている。

(英語記事 Trump and Kim in day of nuclear talks

提供元:https://www.bbc.com/japanese/47397637

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