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2019年3月4日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

3月1日、 Conservative Political Action Conferenceに出席したトランプ大統領(REUTERS/AFLO)

 見せ場に欠けただけでなく、あっけない幕切れの〝政治ショー〟だった。2月27、28の両日行われた第2回米朝首脳会談は成果をもたらすことなく終わった。合意文書への署名も見送られた。決裂に等しいというべきだろう。交渉再開の見通しはたっておらず、実現したとしても、かなり先になる見込みだ。

 双方とも体勢の立て直しに時間がかかることに加え、ここにきて米国側に〝不確定要素〟が生じてきたからだ。トランプ大統領の〝ロシア・ゲート〟スキャンダルだ。時あたかも、ハノイ会談の最中、ワシントンでは大統領のスキャンダルについて元顧問弁護士が証言。米朝首脳会談を押しのけてメディアはこれを大々的に報じた。トランプ氏のスキャンダルは、米朝関係に広く、濃くカゲを落とす。

大統領、証言に神経とがらす

 ハノイで北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と再び相まみえたトランプ米大統領、心ここにあらず、だったのではないか。関心はキャピトル・ヒル(ワシントンの米議会議事堂がある)地域)に注がれ、視界には金正恩ではなく、政敵、民主党のナンシー・ペロシ下院議長(民主党)の姿が浮かんでいたかもしれない。

 首脳会談が唐突に終わったのは、想像をたくましくすれば、コーエン証言で動揺した大統領が不用意な譲歩をするのを恐れた側近が、制裁全面解除という北朝鮮の過大な要求を理由に、打ち切りを進言したのではなかろうか。トランプ氏が会談前、コーエン証言のテレビ放映を注視していたといわれること、会談後の記者会見で議会を強く非難したことからも、大統領が神経質になっていたことがうかがえる。大統領は「重要な会談の日に、このようなウソの証言をさせるとは恐ろしい。2、3日遅らせるか、来週に延期することもできたはずだ」と愚痴っぽい口調も隠さなかった。 

 関心を惹いたのは、会談後の3月1日未明、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相が突然行った記者会見だ。北朝鮮の要求は制裁の一部緩和であって、全面解除ではなかったーと説明するのが目的。その主張をにわかに信じるのは危険としても、米側が北朝鮮の要求を逆手にとって会談を中止したという見方とは平仄が合う。仮定のうえの仮定、あくまでも個人的な推測ではあるが……。

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