2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2011年10月25日

地域密着の営業で成果出すパリーグ

 「親会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金を補填するため支出した金額は、広告宣伝費として取り扱う」(54年国税庁通達)の特例が日本の球団経営を甘いものにし、球団改革を遅らせたようだ。赤字を出し続けたパ・リーグでは、2リーグ制発足時の6球団の親会社が全て撤退し、総入れ替えとなった。 そして、04年大阪近鉄バッファローズの消滅が、他のパ・リーグ球団に大きな衝撃を与えた。親会社が赤字に陥り、その時球団が赤字であれば、球団が消えてなくなることを目の当たりにしたからだ。パ・リーグの球団は黒字に向かって改革を迫られた。だが、テレビ放送権が絡む全国市場の改革はセ・リーグ球団の了解を必要とする。セ・リーグの了解取得は至難の業、時間もかかる。そこでパ・リーグは地方市場からの収入拡大に着手することにした。

 幸い、日本ハムが北海道に移転し、楽天が近鉄に代わり東北に進出、ソフトバンクがダイエーの商圏だった福岡を継承し、バランスの取れたフランチャイズを敷くことができた。これは、フランチャイズ制の利点の1つである地域密着の営業活動を展開できることを意味する。05年以降のパ・リーグの「元気良さ」は地域密着の営業が上手く行われている証であり、数字が如実に物語っている。

 04年11月のオーナー会議でパ・リーグ球団の平均赤字額が32億2200万円と発表されたが、09年度には2球団が赤字だった(『AERA』10年11月29日号)という調査結果も出るようになった。親会社からの補填があった上での黒字だったかも知れない。それでも、観客動員数で見ると、実数発表が始まった05年と比較して10年は158万939人増の983万2981人となっている。赤字球団の減少が親会社からの補填に頼った結果だけでもなさそうだ。

 パ・リーグは、6球団が協働して営業活動を行う会社を07年に設立し、パシフィックリーグマーケティング(PLM)と名付けた。PLMはホームページの作成、インターネット動画中継、リーグスポンサーの獲得などの成果を挙げており、今後も更なる業績拡大が期待されている。

 一方、セ・リーグの観客動員数をパ・リーグの同期間と比べると、63万5451人の増加で、パ・リーグの半分にも満たない。フランチャイズの分布を見ると、バランスが取れていない。全国市場を優先して地域密着の営業が機能していない球団もあれば、東京及び近隣の都市に3球団が並存しているからだ。同じ日の同じ時間に、東京ドーム・神宮球場・横浜スタジアムで試合を行いファンの奪い合いをすることは、地域独占の観点に立てば、最悪の事例だ。関東以北に球団がないのもファン層が偏在する要因となっている。

 現状打開は、全国市場のビジネスモデルを変えることだ。全国市場の管理を個々の球団から一括管理ができる1人の人物に移管しなければならない。それが達成できれば、球団の数を12から16に、更に16から24に増やすことも視野に入ってくる。全国市場が活発化すると、全国市場からの収入分配が増えるので、各球団の収支が改善される。ファン層と市場の拡大も期待できる。さらに良いことは、全国市場からの分配増加が各チームの「戦力の均衡」も促進できる。緊迫した試合が増え、これまで以上にファンを惹きつけることも可能となる。その中で核となって働くのが、MLB同様、シーズン終盤、CS、日本シリーズを連続して全国に放送するテレビなのだ。

 以上のことから、CSと日本シリーズの地上波による全国テレビ放送の重要性が理解して貰えると考える。今NPBに求められるのはリーグ型経営の早期実現である。

◆WEDGE2011年11月号より


 




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