Washington Files

2019年3月6日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 これまで厚いベールに包まれてきたトランプ王国の財務実態解明に向けて、米議会がついに本格的に動き始めた。

 民主党が主導権を握る下院各調査委員会はすでに、“本丸”ともいえるニューヨークの「トランプ・オーガニゼーション」本部最高財務責任者(CFO)ら関係者の証人喚問、事情聴取の準備に着手、聴聞会早期開催に意欲を見せている。

(Tiago_Fernandez/Gettyimages)

 その展開次第では、最終段階を迎えたモラー特別検察官による「ロシア疑惑」捜査以上に、大統領にとって深刻なダメージとなる恐れもある。大いなる成果を期待して臨んだベトナム・ハノイでの米朝首脳会談も物別れに終わり失意のまま帰国したトランプ氏。だが、ワシントンでは今後さらに厳しい現実と試練にさらされることになりそうだ。


 米議会がここにきて風雲急を告げる動きを見せ始めたのは、先月末、トランプ大統領の側近中の側近だったマイケル・コーエン元顧問弁護士の下院監視・改革委員会公聴会での重要証言がきっかけだ。

 この中でコーエン氏はとくに以下のような、核心に迫る証言を行った。

  1. トランプ氏は2016年大統領選挙期間中、自らの過去の税申告内容の公表を拒否してきた理由について「税務当局が監査中だから」と説明してきたが、実際は、内容を公表したとたん、あらゆるシンクタンクや調査機関がそれをもとに洗いざらい細部にわたるまで調べ始め、その結果、改めて追徴処分や罰金を科されかねないことを恐れていたからに他ならない。私は、トランプ氏がいまだに税務当局の監査を受けているとは思っていない。
  2. (証拠書類として同委員会に提出した2011年、2012年、2013年度「財務状況説明書」の意味について)これらの書類は、資金借り入れの必要性を借入先に納得させるためにトランプ氏自身が作成したものだ。とくに上記3年度分の書類は、バッファロー・ビルズ・プロフットボール・チーム買収資金調達のため、ドイツ銀行に提示されたものだ。そもそもこうした「財務状況説明書」は厳格な監査に基づいたものではなく、そのつど必要に応じて財務評価を彼が自分勝手に作成していた書類にすぎない。彼は自分の目的に沿うと判断した場合は自己資産の評価をふくらませ、税申告の際には、逆に過小評価していた。
  3. トランプ氏はまた、取引のある保険会社に対しても、保険料を最低限に抑えるために、資産内容報告書に記載される評価額を過大に記入し提示していた。こうした書類はすべてトランプ氏の指示で作成された。
  4. 彼がこれまで毎年行ってきた税申告内容や財務実態を知るためには、(ニューヨークに本部のある)「トランプ・オーガニゼーション」に関連書類が保管されている。この関連の全容を把握するには、同組織に所属する3人のカギを握る人物がいる。アレン・ウィーゼルバーグ最高財務責任者(CFO)、ロン・リーバーマン上級副社長、マシュー・カラマリ個人秘書だ。彼らを議会聴聞会に喚問することによって同組織の実体、資金の流れなどの全容解明が可能になる。

 これらの証言の中で、最も注目を集めたのが、長年にわたりトランプ氏の“金庫番”をつとめてきたウイーゼルバーグ氏(71)の存在であり、この日の公聴会やりとりでも、35回も名前が飛び出した人物だ。

関連記事

新着記事

»もっと見る