2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2011年10月24日

 現在の海上物流において最も競争が激しいのがコンテナ貨物だ。コンテナは、56年に登場して以来、右肩上がりで伸び続けている。だが、港と港を単純に結ぶだけでは、荷物は集まらない。そこで集積場(結節点=ハブ港)を作って、ここにいったん荷を集めて行き先ごとに積み替える輸送方法(トランシップ)が発達した。

 釜山は、極東におけるコンテナ貨物のハブ港に成長した。日本の各港が軒並み世界順位を下げている一方で、釜山港は世界5位の座を確保している。釜山のコンテナ港は、開港の地である釜山港(北港)で発展してきた。釜山は中国と日本の中間点にあり、韓国国内でも長方形の国土の底辺に位置する。国際的にも、国内的にも、海上貨物が集まりやすい場所だ。

 だが、手狭になり、港の国際競争が激化するなかで、スケールメリットを活かしてより効率的な港湾運営を行うために、新港の開発が進められている。前出のBPAは、北港や新港を管理・運営、および世界の荷主に釜山港の利用を売り込むべく設立された国策会社だ。

最初から長期的な戦略があった釜山港

 なぜ、釜山は世界有数のハブ港の地位を築くことができたのだろうか。BPA社長のノ・ギテ氏は「釜山港は最初からトランシップ港としての成長を目指してきた」と話す。では、釜山がトランシップに目をつけたのはなぜか。

 「70年代までは、大阪湾トランシップと呼ばれて、世界から韓国への荷は大阪、神戸港からトランシップされていた」(国際臨海開発研究センター常務理事東俊夫氏)。しかし、日本で行われていたトランシップは狙って作られたものではなく、付随的なものだった。自国市場で生産・消費されるモノが多いために、港にコンテナが集まり、その結果として周辺の小さな国向けの荷物をトランシップしていた。

 一方で、韓国は国内市場が小さいため、外から荷を集めてくる必要があった。コンテナ貨物取扱量で世界トップ5にシンガポール、香港が入っているのを見れば分かるように、資源がなく国内市場が小さい国が荷を集めるためには、トランシップに特化することが最も有効な策だったといえる。

 釜山の隆盛について「韓国は国策で値下げしているから……」と、冷ややかな物言いをする日本の関係者は多い。確かに、政府が支援する形で、釜山港を使用する船会社や荷主へ入港料を免除するなど、各種インセンティブが与えられ、東京や横浜港と比べると、釜山港のコンテナ取扱料金が2~4割ほど安い。


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