2024年4月20日(土)

“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年3月12日

それぞれの大会の見どころは?

――ここからは両大会の見どころをお聞きします。まずはラグビーのW杯の見どころから教えてください。

中竹:自国開催なので開幕戦から盛り上がると思います。日本代表と同プールには世界ランク2位のアイルランドがいて、前回大会で負けたスコットランドがいます。この両チームに勝てれば初の決勝トーナメント進出になると思います。

 これが日本代表の目標ですが、私が考えるに初戦のロシア戦がやりづらく、苦しい試合になるのかなと思っています。ロシアは世界ランクでは日本の方が上ですし、開幕戦ともなれば捨て身でくるでしょう。そういう相手ですから、日本代表は次を見据えて、なんて考えていると前回大会の南アフリカが日本に負けたようなことになる可能性もあります。

 W杯に楽な試合などありませんが、他のプールに比べれば戦いやすいとは思います。初戦でどれだけ日本代表が良い戦い方をするか、それが今大会の戦績を大きく左右することになると見ています。

 現ヘッドコーチ(HC)のジェイミー・ジョセフは、前回のエディー・ジョーンズとは違って、すでにチームを作り込んでいます。

 彼独自の手法で、自分たちにしかないアイデンティティで、ぐぐっと内側に向かって一体感を作っていくやり方をしています。それを軸に日本が元々持っている阿吽の呼吸と合わせれば本当に強いチームができあがるだろうと思っています。

 そういう意味では、エディー・ジョーンズHCのときは、とにかくハードワークで鍛えられ、きつい条件や状況になればなるほど日本代表の良さを発揮しましたけれど、今回は一体感であったり阿吽の呼吸であったり、ひとつの塊となって戦う日本代表が魅力ですね。

 また個人的な期待としては、前回大会の五郎丸歩選手のようなスターが生まれることです。尾﨑晟也、梶村祐介、野口竜司、堀越康介など、五郎丸の後を担うであろうフレッシュな選手の活躍に期待しています。

――続いてウィルチェアーラグビーのワールドチャレンジ2019の見どころについてお聞かせください。

中竹:日本代表は2018年の世界選手権で世界一になっています。今回は、オーストラリアやアメリカという強豪国から追われる立場になりました。その中でどんなタフな戦い方ができるかですね。優勝したときも格下という相手に苦しむ試合もある中で勝ち上がりました。

 そういった経緯もあって、メンタル面が鍛えられ準決勝、決勝と素晴らしいパフォーマンスを見せて勝利しました。これを維持できるか、王者としてブレないパフォーマンスを示し続けられるかという点が見どころです。

 今回は日本代表のメンタルタフネスを見ていただきたいと思いますし、さらにタフになっていくプロセスも見てほしいと思っています。

 また、女性の倉橋香衣選手(過去記事参照)がいるので、男女混合の競技の良さや多様性のある競技であることを示せるチャンスだと思っています。

――選手をタフにした要因とはどういったところにあるのでしょう?

中竹:日本代表のケビン・オアーHCと定期的にミーティングを行っているのですが、彼はプランが明確で戦略家として長けています。選手たちも彼の示す戦略をよく理解し、それぞれ自分たちが何をするべきなのか理解が進んでいます。その知の高まりが試合では実績となって表れ、自信に繋がってきたところです。どんな局面になっても焦らず、愚直にプレー出来るか、それが重要なポイントです。

――最後の質問になります。中竹さんが目指す共生社会の姿とは?

中竹:誰しも最初は車いすを使っている人を見てかわいそうだとか、大変だなという同情するような見方をしてしまいがちですが、あくまでも人としての違いなんだという意識で、お互いがフラットに話ができて、対等に支え合える社会になれたらいいと思っています。

 人間は何らかの制限がかかると別の能力が発達するものですから、それによって欠けているものより、研ぎ澄まされたものを生かしあえれば、より良い社会になると思います。

 それは、スポーツだけではなく、社会生活のなかでも、企業内でも、プロフェショナル同士でもそうした関係性が生まれることが望ましいですね。

 車いすの方とか、義足の方とか、その方たちにはそれが日常ですが、受け手側が慣れていないために驚きだったりしてしまうんです。そういった驚きがパラリンピックを契機に、車いすや義足の人もスポーツすることが身近に思えるようになれば、街で見かけてもそれが当たり前になってきます。それが本来あるべき姿ではないでしょうか。

 私の経験ですが、リオ・パラリンピックに行ったとき、選手に限らず観客も含め周りは障害者の人が多い中にいると、気がつくと健常者とか障害者という概念が完全になくなっていました。

 そのような感覚が、日本でも感じるようになればもう少し住みやすい社会に近づいている証拠でしょう。

――両団体の架け橋として共生社会の実現を目指している中竹竜二さんにお話を聞きました。中竹さん、お忙しい中お時間をいただきありがとうございました。
 

<中竹竜二(なかたけ りゅうじ)プロフィール>
日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター
株式会社チームボックス 代表取締役(https://corp.teambox.co.jp/
一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長
一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。2010年、日本ラグビーフットボール協会 「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』( CCCメディアハウス)など多数。
セミナーテーマキーワード:Winning Culture、これからもとめられるグローバルリーダーとは、フォロワーシップ、ビジョンとミッション

 

  
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