2024年4月20日(土)

中東を読み解く

2019年3月14日

米軍の退去要求も

 事の発端はトランプ大統領の昨年暮れのイラク電撃訪問だ。紛争地への兵士激励訪問をせずに、臆病者呼ばわりまでされていた大統領は12月26日、メラニア夫人とともに、イラク西部のアルアサド空軍基地を訪問した。イラクには現在、同基地を中心に特殊部隊など米兵約5200人が駐留している。

 大統領は同基地での演説で、イラクに駐留し続ける理由として、同国をシリアのIS叩きの「出撃基地」にすること、そしてもう一つはイランの動きを監視することだと明らかにした。これにイラク側は強く反発した。一部のイラク国会議員はイラクの了承を得ないそうした構想は「同国の主権を侵害するもの」と断じ、米軍の退去を要求する法案を出す動きにまで発展した。

 サレハ大統領自身、ロウハニ大統領との合同記者会見で、「米軍がイラクに駐留しているのは対テロ作戦を支援するためであり、自分たちの紛争にイラクを巻き込むためではない」と述べ、「イランとの良好な関係はイラクの根本的な国益だ」とトランプ政権の強引なやり方にノーを突き付けた。

 トランプ大統領がイラクを訪問した際、サレハ大統領ら指導者と会わなかったこともイラク側を怒らせた。トランプ氏は会談場所として、アルアサド空軍基地を希望したが、イラク側はバグダッドでの会談という主張を譲らず、実現しなかった。

 米国は治安上の理由から、空軍基地以外での会談を当初から考えていなかったが、イラク側から見れば、他国を訪問しながらその国の指導者を呼びつけるという形は到底受け入れられるものではなかった。「イラクを軽視し、侮辱したともいえるやり方に、イラク人の誇りはいたく傷つけられた。彼らはイラク人を見下すトランプ氏の傲慢ぶりを怒った」(アナリスト)という。


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