チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年11月9日

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三宅康之 (みやけ・やすゆき)

関西学院大学教授

1969年生まれ。京都大学博士(法学)。専攻は現代中国政治外交。著書に大平正芳記念賞を受賞した『中国・改革開放の政治経済学』(ミネルヴァ書房、2006年)などがある。

 中国では、「一石二鳥」ならぬ「一石多鳥」の目標を掲げた包括的な政策パッケージが練られ、実行に移されていることがしばしばある。否、むしろ「一石多鳥」でないことのほうが少ないかもしれない。去る10月15日から18日にかけて北京で開催された、第17期中央委員会第6回全体会議(以下、17期6中全会)で打ち出された政策文書についても、「文化体制改革の深化」の名の下に複数の目標が掲げられており、興味深かったため、この場を借りて検討してみたい。

示された2020年までの奮闘目標

 会議で審議、採択された政策文書の正式名称は、「中国共産党中央の文化体制改革の深化、社会主義文化の大発展・大繁栄の推進の若干の重要問題に関する決定」という長いタイトルである(以下、「決定」)。全文公表は、会議閉幕から1週間後、25日になってからのことであった。

 文書に目を通すと、冒頭部で「2020年までの奮闘目標」として、次のようなさまざまな目標が掲げてある。

(1)社会主義核心価値体系の建設が進み、公民の素質が向上すること、
(2)文化的プロダクトが豊富になり、優れた作品が絶えず現れること、
(3)文化事業が全面的に繁栄し、公共文化サービスが均等化すること、
(4)文化産業が国民経済の基幹産業となり、総合国力と国際競争力が増強すること、
(5)文化管理体制と文化的プロダクト生産メカニズムが活力を増し、効率を上げ、中華文化が世界に向かって開けた構造となるよう促進すること、
(6)文化的素質の高い人材を育成すること、

 である。以下、章ごとにこれらの目標を説明し、最後に党の文化工作の指導の強化と改善について述べる、という構成になっている。

「孫がウルトラマンばかり見て困る」とこぼした温家宝

 会議前に話題になったのは、今度の「決定」は「文化強国」を目指す宣言であろう、ということであった。確かに「国家文化のソフト・パワー(軟実力)、中華文化の国際影響力を増強」し、国内の文化水準を引き上げ、対外的には中国のイメージを改善し、「総合国力競争」で優位に立つことを目指す、とされている。しかし、それは目標の一つでしかない。

 ほかにも、「決定」は、公益的な「文化事業」と商業的な「文化産業」に区分し、文化産業を国の基幹産業とする、としている。文化産業とは、出版、映画、アニメ・漫画産業など幅広く想定されている。このような文化産業振興策は、06年に打ち出されていた。米国のディズニーや日本のさまざまなアニメの先行例が意識されていることは言うまでもない。一昨年前、温家宝総理が「孫がウルトラマンばかり見て困る」とこぼしたことが思い出される。その後も中国の子供番組、アニメ作品に成功例が少ないことは、週刊誌『中国新聞週刊』(9月19日付)も特集を組んで指摘しているところである。

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