Washington Files

2019年3月18日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

集金力

 オルーク氏は14日、アイオワ州遊説先で記者団に対し「われわれは政治史上かつてないほどの全米規模の草の根運動を組織して戦う」と語り、先の上院選挙戦をはるかに上回る、ボランティア組織やSNSなどをフル活用した大胆な戦略と戦術で臨む決意を表明した。

 とくに今後、10人以上の候補乱立が予想される民主党指名争いで生き残るには、テレビ、ネット広告に投じる資金力が最重要視されるが、オルーク氏は先の上院選でも8000万ドルという米議会選挙史上最高額の資金を大口献金者たちに頼ることなくかき集め、大きな話題を集めた実績がある。

 その内訳をみると、一口100ドル以下の小口献金が3680万ドルと5割近くを占めたほか、対象者別では婦人層からの献金が2140万ドル、退職者500万ドル、非政治組織・個人470万ドルなど、幅広い層にまたがっていたことが明らかになっている。

 今回は上院ではなくトランプ氏との対決をめざした大統領選への立候補だけに、献金総額はさらに大規模なものになることが予想される。

 一方、オルーク候補の前途にいくつか不安要因がないわけではない。

 そのひとつが、民主党全国組織との関係だ。

 オルーク氏はこれまで、下院選そして昨年の上院選を通じ、民主党主流とは距離を置き、もっぱらボランティア組織や個人のネットワークを重視した草の根運動中心で選挙戦を戦ってきた。しかし、大統領選では来年11月の本選の前に、十人を超す民主党候補相手に全米50州での党指名争いを勝ち抜いていく必要があり、資金面そしてスタッフ動員などの支援を仰ぐために民主党全国委員会とのしっかりした関係を構築できるかどうかがカギとなる。これまで伝えられるところによると、同氏はまだそうした動きを見せていない。

 「オバマ前大統領の再来」の呼び声高いオルーク氏だが、白人である彼が果たして黒人、ヒスパニックなどマイノリティ有権者の支持をどれだけ得られるかも不明だ。オバマ氏は2008年大統領選予備選で黒人票の67%%、ヒスパニックも50%以上を集めたが、オルーク氏のテキサス州における選挙実績を見る限り、黒人、ヒスパニック有権者の間での支持は低調だった。しかし本選でトランプ大統領に勝つためには、白人のみならず、マイノリティの圧倒的支持が不可欠であるだけに、今後いかにアピールしていくか、大きな課題だ。

 そしてさらに問題視されているのが、これまでの発言などを見る限り、政策面での姿勢があいまいで、明確な方向性が有権者に理解されていない点だ。

 たとえば、移民問題ではトランプ政権の壁建設自体には猛反対しているものの、検挙された不法移民家族の処遇については、具体的な見解を示していない。

 サンダーズ候補らが早くから主張してきた医療保険制度を「国民皆保険」にする公約についても、あるときは「支持」を表明したと思えば、別の場所では「留保条件」をつけるなど、考えが揺れ動いたままだ。

 ワシントンポスト、ニュヨーク・タイムズなど有力紙のコラムニストたちは、今後各州における予備選で勝ち抜いていく上で、従来のようなあいまいな態度のままではそのうち有権者に背を向けられることになるだろう、とオルーク候補に警告を発している。

  
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