Wedge REPORT

2019年3月18日

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イチローの言葉は賞賛の声だった

 これは非常に危険な流れだ。現場で取材していた側から言わせれば、イチローは何も今村を見下していたわけではない。むしろ逆で、その後に飛び出したイチローの言葉は賞賛の声だった。
「ダグアウトから見ていても(メジャーリーガーの投手の球速とは)明らかに違うからね。球が速いピッチャーじゃないとは思うもののびっくりしましたね。でも途中から丁寧に一生懸命、投げていたね。先発の子」

 この日の今村の球速は最速143キロ。とはいえ130キロ台前半の直球を主体とする組み立てだったことから、いつも対戦するメジャーリーガーの投手たちと比較して「球が遅い」と感じられた点は紛れもない事実だ。実際、この日はマリナーズ側の主力打者たちもベンチで今村の〝遅球〟について「球速が遅いことでタイミングが非常にとりづらく、アジャスト(順応)は容易ではなかった」と口を揃えていた。

 今村の前にマリナーズ打線が5回5安打6奪三振1失点と抑え込まれてしまったのは何よりの証拠である。ここまでイチローもメジャーリーガーの速球派投手たちとの対戦をオープン戦で繰り返していただけに他のチームメートたちと同様、今村の投球には目慣れしておらず、明らかな戸惑いから「びっくりした」という本音が出たのだ。

 だからイチローにも当然、悪意はない。にもかかわらず「今村をバカにしている」だとか「日本人投手をディスっている」だとか、四の五の言われるような流れになってしまったのはイチロー本人も、きっと不本意だと思っていることだろう。

 それじゃあ、結果が出ていないんだから「球遅いっしょ」なんて軽々しい口を叩くなよ――。目くじらを立てながら、そういう具合に何だかんだとワーワー反論する人も必ず出てくるはずだ。でも実際にメジャーリーグ取材を数年にわたって現地で経験した自分の立場から言わせてもらえば、それがイチローという選手なのだと思う。

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