海野素央の Love Trumps Hate

2019年3月26日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプの勝利宣言と民主党の対策」です。ウィリアム・バー米司法長官は3月24日、ロシア疑惑に関してトランプ陣営とロシア政府の共謀は認定できなかったと米議会に報告しました。ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書は、司法妨害を巡っては判断を示しませんでした。

 本稿では、ドナルド・トランプ米大統領に対するロシア疑惑の捜査結果の意味及び議会民主党の対策について述べます。

24日、ニューヨークのタイムズスクエアに集まったトランプ支持者たち( REUTERS/AFLO)

論争を呼ぶバー長官の結論

 バー司法長官は上下両院の司法委員会委員長並びにランキング・メンバー(最古参議員)に提出した4ページの書簡で、2016年米大統領選挙においてトランプ陣営のスタッフが選挙に影響を与えるために、ロシアの陰謀に加わった証拠は確認できなかったと結論づけました。

 書簡によれば、ロシアの「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」という企業は、偽情報をネット上に拡散して米国社会に不和の種をまき、大統領選挙に影響を及ぼそうとしました。しかし、トランプ陣営とIRAの共謀を裏づける証拠は確認できなかったと明記しています。

 加えて、ロシアのハッカー集団がクリントン陣営と民主党本部の電子メールを窃盗し、内部告発サイト「ウィキリークス」に公開した件に関しても、トランプ陣営とロシア政府が共謀した事実は見つからなかったと記しています。

 一方、トランプ大統領の司法妨害に関しては結論に至りませんでした。モラー特別検察官のチーム内で、司法妨害の対処を巡ってもめたことを窺わせます。

 モラー特別検察官は、報告書の中で司法妨害に関して「トランプ大統領は犯罪を犯したと結論づけていないが、このことが大統領の容疑を晴らすものでもない」と指摘しています。つまり、無罪とは断定していないわけです。

 にもかかわらず、バー司法長官は「私とロッド・ローゼンスタイン司法副長官は、(トランプ大統領が)司法妨害の犯罪を犯したと立証するには不十分だと結論づけた」と米議会に対して説明しました。

 モラー特別検察官が司法妨害について判断を示さなかった理由に関して、米国の専門家の間で見解が分かれています。

 1つはモラー特別検察官は司法妨害に関して、司法妨害に相当する場合としない場合の双方の見方を示し、司法長官と司法副長官に判断を委ねたという考え方です。もう1つは、米議会に判断を任せたという見解です。後者を支持する専門家は、バー長官とローゼンスタイン副長官の判断は、「単なる意見に過ぎない」と批判しています。

 議会民主党は、司法妨害についてモラー特別検察官が示した双方の見方を記述した箇所を精査することを強く望んでいます。今後、バー長官とローゼンスタイン副長官の司法妨害に関する解釈の仕方が、争点となることは間違いありません。

 さて、モラー特別検察官はトランプ大統領の弁護士チームの抵抗に遭い、同大統領を対象にヒアリング調査を実施できませんでした。

 弁護士チームはヒアリングに応じた場合、トランプ大統領が「偽証罪」の罠に嵌ることを恐れたからです。その結果、トランプ大統領はモラー特別検察官の質問に対して、書面回答で応じ、逃げ切ることができました。ここが分岐点でした。

 司法妨害罪に相当すると判断するには、同大統領に対するヒアリングは不可欠だからです。モラー特別検察官が司法妨害に関して結論に至らなかった要因として、この点は看過できません。

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