2024年4月24日(水)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年4月15日

コノリー議員の反応

集会に参加した熱狂的なトランプ支持者の白人女性(筆者撮影@ミシガン州グランドラピッズ)

 では、議会民主党はバー司法長官のモラー報告書の概要をどのようにみているのでしょうか。また、トランプ大統領に対してどのような選挙戦略をとるのでしょうか。

 下院監視・改革委員会のメンバーであり、トランプ大統領の元顧問弁護士であるマイケル・コーエン被告に公聴会で質問をしたジェリー・コノリー議員(民主党・バージニア州第11選挙区選出)に4月1日、ワシントン事務所で聞いてみました。

 コノリー下院議員は不満そうな表情を浮かべながら、次のように語りました。

 「私はバーの概要に満足していません。司法妨害は認定できなかったと判断したのは、彼の主観です。共謀についても納得できません。(トランプ陣営元選対本部長の)マナフォートはロシア政府の情報機関とトランプ陣営のデータを共有しています。(同陣営元顧問の)ストーンはウィキリークスと連絡をとっていました。陰謀があったと疑っても当然です。完全なモラー報告書を読むまでは、バーの見解を受け入れることはできません」

 コノリー下院議員はモラー報告書の「完全開示」を要求していました。米国民も同様です。

 米ワシントン・ポスト紙とジョージ・メイソン大学(バージニア州)の共同世論調査(19年3月26-29日実施)によれば、米国民の83%がモラー報告書の完全開示を求めています。

 同調査では、モラー報告書の「トランプ陣営とロシア政府との共謀はなかった」という結論に対して、52%が「受け入れる」と回答しています。

チームトランプ(筆者撮影@ミシガン州グランドラピッズ)

 ところが、トランプ大統領のロシア疑惑捜査に対する司法妨害については、まったく異なった調査結果が出ています。49%が同大統領が司法妨害を「した」と答え、「しない」の44%を5ポイント上回っています。加えて、41%がバー長官の司法妨害についての意思決定は「不適切である」と回答しており、「適切である」の39%をわずか2ポイントですがリードしました。

 コノリー議員は、議会民主党が20年米大統領選挙においてとるべき選挙戦略についてもコメントをくれました。

 「モラー報告書は無視できません。しかし、民主党は次の大統領選挙ではロシア疑惑ではなく、オバマケアや労働者の賃金値上げなどの争点で戦うべきです。昨年の中間選挙が証明しました」

 確かに18年米中間選挙で、民主党はロシア疑惑ではなく、医療保険制度改革などを争点に据えて、下院を共和党から奪還し、多数派になりました。

トランプ大統領の仮面を被った白人男性の支持者(筆者撮影@ミシガン州グランドラピッズ)

 うえで紹介したワシントン・ポスト紙とジョージ・メイソン大学の共同世論調査において、「米議会はトランプ大統領を罷免する弾劾手続きを始めるべきか」という質問に対して、54%が「始めるべきではない」と回答し、「始めるべき」の41%を13ポイントも上回りました。

 ただ、民主党支持者の61%が「始めるべき」と答えています。中道路線をとり、トランプ弾劾に慎重なコノリー下院議員とそれに積極的な同党の左派勢力との間には、弾劾に関してかなりの隔たりが存在しています。党内がトランプ弾劾と次の選挙戦略を巡って分裂しているのは、弱点かもしれません。

 コノリー下院議員は、もちろんロシア疑惑捜査の幕引きには反対ですが、選挙において民主党が同疑惑以外の争点に時間を費やすことの重要性を繰り返し強調していました。

  
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