Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年4月30日

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本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏 やラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏、USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏、大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

「歴史に『if』はある」。というのも、様々な可能性のなかで現在があるからだ。歴史観を磨くことは、フェイクニュース、プロパガンダに対抗する力になる。

ならおか・そうち 1975年青森県に生まれる。2004年京都大学大学院法学研究科博士後期課程修了。現在、京都大学大学院法学研究科教授。著書に『「八月の砲声」を聞いた日本人 — 第一次世界大戦と植村尚清「ドイツ幽閉記」』(千倉書房)など。(写真・さとうわたる)

 平成が31年で幕を閉じる。次にくる令和の時代はどのようなものになるのか。未来を見通すには過去、歴史を学ぶことが大きな助けになる。

 日本政治外交史を専門とする京都大学大学院法学研究科教授の奈良岡聰智は、歴史観を磨く意義について次のように語る。

 「歴史に『if』はないとよく言われますが、あるんだと思います。歴史というものは必然で進んでいるのではなく、様々な可能性があって、その中から主体的に政治家なり国民が選んで進路を進む場合もあれば、災害や戦争のように偶然によって進むこともあります。今の姿が必然、不可避だったと考えるのは正しくありません。過去のある時点で、国家、社会が置かれていた状況を客観的に提示することが歴史家の役割の一つであり、それをよく吟味することで、我々は未来を見通すことができるのです」

 こうした歴史の検証において必要になるのが過去の資料である。それにもかかわらず、日本では役所の意思決定やそのプロセスを記録する公文書の保管で問題が起きた。

 「日本は戦後、自由で民主的な政治体制をとり、世界的にも評価されてきましたが、公文書管理制度については、民主主義を担保する重要な要素であるにもかかわらず、しっかりとしたものができていませんでした。それがこの数年、色んな形で問題として出てきているというのが現状です。公権力を行使する立場にある人は、意思決定をしたプロセス、理由をしっかりと記録に残しておく必要があり、一定段階を経たら公開しなければなりません」

 歴史家が歴史を検証していかなければならない一方で、一般市民も「歴史観」を磨いていく必要があると、奈良岡は説く。

 「現在の生活や社会の在り方といったものは歴史に規定されています。そのため現状の問題点を考え、それを変えようとするならば、歴史に立ち返る必要があります。様々な可能性があったなかで現在があるという感覚をしっかりと持ち、現状を相対化する視点を持つこと。それが歴史観を磨くということです。これは、フェイクニュース、プロパガンダ、誇張、ねつ造といったものに対抗する力にもなります」

 しかし、歴史的に見ても一般市民というのは、プロパガンダに流れやすく、ポピュリズムを喜んで受け入れがちのようにも見える。

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