2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2011年7月20日

 欧州ではいまギリシャ問題対策として、同国債を保有する民間銀行に対し低金利のまま新たな国債を購入するよう要請している。これは先述した「金融抑圧」の変形に他ならないが、金融機関は市場混乱を防ぐという大義名分に逆らうことはできないだろう。

 金融と国家は中世以来、不思議な二人三脚で結ばれてきた。時に対立することはあっても、国家は金融を必要とし、金融は政府や教会などの権威に擦り寄って成長したのである。その過程で、ホッブズの契約論と似たような形で金融も国家に従属することになった。必要自己資本を強制されたり、破綻の危機に際して銀行が公的資金で救われたりするのはその一例である。「金融は自由だ」という思想は、まさに新自由主義が産み落とした幻想に過ぎない。

 こうしてみると、金融抑圧による低成長の長期化は宿命的なプロセスとも言えそうだ。それは憂鬱なシナリオではあるが、見方を変えれば原発や金融の安全性を盲信して成長の永続性を夢見た「超債務時代」から脱出し、「ポスト財政危機」としてGDPだけに視点を置かない未来の経済社会像を見据える為の好機なのかもしれない。

◆WEDGE2011年8月号より


 

 

 


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