中東を読み解く

2019年5月1日

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 スリランカ・テロを背後で操ったとされる過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者、アブバクル・バグダディ(47)が4月29日、5年ぶりにビデオ映像の中で姿を見せた。バグダディは同テロ事件を「ISの最終拠点が奪還された報復」とし、「(最後の)審判が下るまで十字軍との戦いは続く」と決意を表明した。バグダディはどこに潜伏しているのか。

バクダディ氏(Al Furqan Media Network/ロイター/アフロ)

なぜ今、現れたのか

 バグダディが音声メッセージ以外に姿を現したのは2014年7月以来、二度目のことだ。この時はISが占領したイラク・モスルの「アルヌーリ・グランド・モスク」の説教台から「カリフの国」の樹立を宣言し、領地を獲得したISの力を誇示した。

 しかし、米国が有志連合を募ってIS掃討に本腰を入れたことにより、次々に拠点を失い、先月にはシリア東部バグズ村に最後の残党約1000人が追い詰められ、激戦の末殺害された。バグダディをめぐってはこれまで、ロシア軍機の爆撃による死亡説や、重症を負って再起不能になったなどとの未確認情報が流れていた。

 米政府はバグダディを最重要のお尋ね者として、そのクビに2500万ドルの賞金を懸け、中央情報局(CIA)や軍情報機関などが総力を挙げて追跡してきたが、その行方はつかめていない。しかし今回、突然のように姿を現したのはなぜなのか。身の安全を図るだけなら、行方不明のまま、すでに死亡していると思わせていた方が良かったはずだ。

 ベイルートの消息筋は、ISが本拠地シリアで組織的に壊滅した後も、組織がなお健在であり、指導者としてトップに君臨していることを誇示するタイミングをバグダディが図っていたと見ている。そうした中、スリランカでのテロが250人殺害という、彼らにとって大きな成果を挙げたため、自らをアピールする好機と判断したのではないか、という。

 スリランカの犯行組織とISとの関係はいまだ解明されていないが、組織が撮影した動画では、犯行首謀者がバグダディへの忠誠をはっきりと誓っている場面が映っており、このことも姿を見せる誘引になったかもしれない。バグダディが姿を現したかどうかにかかわらず、「スリランカ・テロはテストランだった。これに味を占めてこれからテロが続発する恐れは十分にある」(同)という懸念は傾聴に値する。

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