世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年5月8日

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 昨年12月以降、南シナ海でフィリピンが実効支配するティツ島(フィリピン名はパグアサ島)の周辺海域に中国の船舶が蝟集し、両国間で緊張が高まっている。ティツ島はスプラトリー諸島におけるフィリピンの最も重要な軍事拠点であり、中国が主張するところの「九段線」の内側に位置する。

(bogdanserban/gettyimages)

 フィリピン政府によれば、今年の1月から3月の間に、ティツ島周辺海域において、275隻の中国船が657回にわたって視認された由である。これらの中国船はいわゆる「海上民兵」の船舶を含む多様な能力を有する集団であり、近年、中国はこれらの船の活動を軍艦と海警局の船舶で支援している。

 これら多数の船は、フィリピンの漁民が2016年に海洋法裁判所がフィリピンの大陸棚に属するとの判断を示した海域に入ることを妨げているばかりでなく、フィリピンの軍艦の行動に制約を課している。

 これは、中国が得意とする嫌がらせの手法である。しかし、何を狙ってこういう行動に出たものか明らかでない。フィリピンはこの島のインフラの少々の維持整備を進めているらしく、これを妨害するのが中国の目的だという見方もある。米軍が利用する価値のある島なら兎も角、そこまでする必要があるのか、良く分からない。

 3月1日に米国のポンペオ国務長官は、フィリピンのロクシン外相との共同記者会見で、南シナ海における中国の人工島造成と軍事活動は米比に対する脅威であるとした上で、「南シナ海は太平洋の一部であるので南シナ海におけるフィリピンの軍、航空機あるいは公船に対する武力攻撃は米比相互防衛条約第4条の下における相互防衛の義務を発動させる」と述べた。

 米比相互防衛条約第4条は「各締約国は、太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」との共同防衛義務に関する規定である。

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