WEDGE REPORT

2009年10月20日

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2020年の温室効果ガス「1990年比▲25%」という目標はいったい何を意味するのか。民主党の批判する、前政権の中期目標検討委員会の公開資料を丹念に読み込めば、具体像が見えてくる。10年後の20年における突出した「野心的目標」は、日本だけ持続的成長から脱落することを意味する。

 鳩山由紀夫首相は、2009年9月の国連総会、ピッツバーグでの世界20カ国・地域(G20)による首脳会議(金融サミット)についての記者会見でこう語った。

 「一部の産業界の方々からはとても無理だという話がある。しかし、私は、日本が今日まで高い目標を掲げることで、世界の誰も到達できなかった目標を達成してきた、日本人の科学技術力を展開させれば決して不可能ではないと信じている。十分に自信はあるし、見通しもある。太陽パネル、あるいは燃料電池、さまざまなグリーンテクノロジーがいわれているが、水素エネルギーというものも将来出てくると思う。こういった代替エネルギーというものを、日本が世界に先駆けてリード役を務め、発展途上国にもその技術力を広めていくことが極めて肝要だ」

 民主党は、「グリーン革命」ストーリーに執拗に拘っている。厳しい目標を掲げれば、新たな環境技術が花開く。環境対策と経済成長は両立し、国民に大きな負担を強いることはない、そう説得したいという思いが、鳩山発言にはよく表れている。

 しかし、この発言は、時間軸が決定的にずれている。首相の掲げた目標が2050年、いまから40年あるなら理解できる。20年まであと10年。燃料電池や水素エネルギーがいったいどの程度のコスト競争力をもち、どれくらいの大きさの産業に育つというのだろうか。

検討委員会の分析は誤りなのか

 麻生前政権は、中期目標検討委員会(座長・福井俊彦前日銀総裁)を官邸に設置した。日本エネルギー経済研究所、地球環境産業技術研究機構(RITE)、国立環境研究所、日本経済研究センター、慶應義塾大学……。エネルギー、環境技術、産業構造、経済モデル、各分野のエキスパートが集められた。「あれ以上の布陣はない」と関係者は語る。その分析結果を、「脅しに近い」(岡田克也外相)と断じ、「再計算する」(小沢鋭仁環境相)と言う。

 まずは、検討委員会の分析結果をよく読んでみよう。麻生前首相が「ピンチをチャンスに変えてきた産業界の歴史と伝統」に期待して1%上乗せしたのは選択肢3(90年比▲7%)に対してである。鳩山政権の「90年比▲25%」は、すべて国内対策(いわゆる〝真水〟)とすれば選択肢6にあたる。

 選択肢6の姿は強烈だ(下表)。実質GDPは▲3.2~▲6.0%。「技術への投資がカウントされていない」との批判も聞かれるがそれはあたらない。民間設備投資がプラスになっていることからもわかるように太陽光発電などへの投資は算入されている。

 可処分所得は▲22~77万円(年間)。よく言われる「▲36万円」は低位推計だ。選択肢3の▲4~15万円のレベルでも、公開ヒアリングの場で消費者団体から「とても耐えられない」との声があがっていた。光熱費負担やガソリン価格の上昇を見れば、低所得者や地方への影響がいかに大きいかがわかる。

2020年の削減目標が経済に与える影響
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