WEDGE REPORT

2009年11月20日

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「経済メカニズムのポリシーミックスで▲25%の目標は、経済への悪影響なく達成できる」というのは詭弁である。特に、排出権取引制度は問題が多い。金融やルールメイクで儲けられる欧米と、削減義務のない途上国の餌食になるだけだ。日本が貢献すべきは、長期的かつ革新的な技術開発だ。▲25%目標は、下手をすればそのチャンスを失わせる。

 「1990年比で言えば2020年までに25%削減をめざします。これはマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として、国内排出権取引制度や再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく決意です」(国連気候変動首脳会合における鳩山首相演説)

 果たして、これらの経済メカニズムで目標は達成できるのだろうか。

排出権取引制度とは何か

 排出権取引制度とは、企業などの排出主体にキャップ(排出枠)をかけ、キャップ以上の排出をしたい企業は市場から排出権を購入し、キャップ以下までに削減が進んだ企業は余った排出枠を排出権として市場に売却するという制度である(下のイメージ図参照)。

排出権取引制度のイメージ
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 排出権取引制度のメリットは、確実かつ効率的に、つまり最小のコストで排出量が削減できることにある。しかし、このメリットはあくまで理論上の話であって、現実の世界では追求することが難しい。

 一つ目の問題は、キャップの初期配分にある。過去の排出量に応じて配分すれば、それまでの省エネ努力が報われない(効率が悪いほうが得をする)。省エネ努力を認めるよう過去の取り組みや現時点の実情を検討するには、政策当局は企業ごとの詳細なデータを把握・分析しなければならず、透明性の確保も含め行政コストが嵩む。

 しかも、技術レベルや、生産量の状況が異なる産業にまたがって公平性を担保するのは不可能である。国家が産業の優先順位を決めることに近いからだ。しかも事業撤退の際に与えたキャップをどうするか、新規事業に対してどうキャップを配るのかとなるとさらに複雑になる。これらの差配を行政府が牛耳れば「官僚主導」になり、議会が牛耳ればロビーイングが多発する。

 配分される排出枠はいわば天から降ってくる財産であり、企業はいかに多くの排出枠を受け取るかに血眼になる。各企業が市場の排出権価格だけを見て合理的に行動することによって担保されていた経済効率性は結局失われ、排出権取引制度の最大のメリットは消える。

 二つ目の問題は、制度が国際競争に耐えられないことだ。

 理論上は、必要な削減量から限界削減費用が導き出され、そこに排出権価格が収れんする。麻生前政権の中期目標(90年比▲8%)を排出権取引で達成しようとすれば、▲8%と対応する限界削減費用150ドル/トンCO2が、排出権取引価格のターゲットとなる。

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