2024年4月20日(土)

Washington Files

2019年5月7日

イラン核合意に反発していたサウジアラビア

 そのひとつが、2018年5月、トランプ大統領が突如発表した歴史的国際取り決め「イラン核合意」からの離脱と対イラン経済制裁再開にほかならない。

 同合意はいうまでもなく、オバマ前政権時代の2015年7月に欧米および中露の6か国とイランの間で締結されたもので、核開発途中だったイランの計画凍結を前提に、それまで関係各国が実施してきた対イラン経済制裁解除を約束したものだ。トランプ大統領自身は以前から「条約の不備」について批判してきたものの、就任後しばらくの間、イラン合意そのものの扱いについてはあいまいな態度のままだった。

 しかし、同合意に最初から猛反発してきたのがサウジアラビアであり、とくに、合意によって経済制裁解除となり、イラン経済の改善につながることを最も警戒してきたのも同国だった。そして当然のことながら、トランプ大統領および側近たちに対しても、「イラン核合意離脱」を機会あるごとに働きかけてきた。

 この点、大統領による2018年5月の離脱発表のタイミングと、それに先立つ2017年初めと2018年初期にかけて、サウジ王室関係者たちがトランプ氏所有の二つのホテルに多額の出費をしたことを、「偶然の一致」とする見方はないに等しい。

 むしろ、アラブ石油業界紙誌ジャーナリストの間では、「サウジが(離脱への)トランプ説得に決定的役割を果たした」との見方が圧倒的だ。その裏付け材料として、トランプ大統領が離脱発表に際し、対イラン経済制裁再開が原油価格の急騰を引き起こし世界原油市場を混乱させる事態を回避するため、サウジに対し、急遽「増産」を呼びかけ、サウジ側がこれに応じた事実が指摘されている。サウジの増産決定は、イラン合意離脱を決断したトランプ大統領に対する「返礼」というわけだ。 


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