2024年4月20日(土)

日本を味わう!駅弁風土記

2012年1月16日

  東海道新幹線の駅弁の寿命は短い。国鉄の分割民営化により、当時の日本食堂のうちJR東海のエリアを受け持った、現在のJR東海パッセンジャーズ(JRCP)は、季節等にあわせてリニューアルを施す。ビジネスマンをターゲットにした大量高速輸送交通機関では、このようなスタイルが合うのだろう。駅弁ファンにとっては、常に新作を手に取れる楽しさもありつつ、一方で定番の駅弁が育たない悲しさもある。

ロングセラーの駅弁になる日を夢見て……

 そんな中で品川駅弁「品川名物貝づくし」は、9年目のシーズンを迎えようとしている。定番の駅弁としてはまだまだ若いが、東海道新幹線のJRCPの駅弁としては驚異的な長寿命を誇る。平成初期までにルーツを持つ「チキンバスケット」や「深川めし」は登場と終売が繰り返されているし、公募作品の商品化により2000(平成12)年1月1日に誕生してロングセラーの予感を思わせた名駅弁「21世紀出陣弁当」でさえも、通年販売は10年目を迎えられなかった。(期間限定での販売は行っている)

 東京都内の駅弁そのものも寿命が短い。国鉄時代からの駅弁屋はすべて消え、JR東日本エリアで列車内食堂の営業や弁当類の製造販売を行っていた「日本食堂」の流れをくむ日本レストランエンタプライズ(NRE)も駅弁のリニューアルに積極的である。都内は東京駅だけで120種類以上の駅弁が買える全国一の駅弁激戦区であるにもかかわらず、国鉄や昭和の懐かしさを感じられる駅弁は、1964(昭和39)年生まれの東京駅弁「チキン弁当」と、2001(平成13)年に復刻された1957(昭和32)年生まれの新宿駅弁「鳥めし」くらいのものである。

 しかし、百数十年の歴史を刻む駅弁も、発売開始当時は間違いなく新作であった。21世紀版の東海道新幹線として2027(平成39)年度の先行開業を目指すリニア中央新幹線は、東京都内の始発駅を品川へ求める予定だと聞く。その頃には、品川駅で四半世紀の歴史を刻む昔懐かしい味として、「品川名物貝づくし」をまた紹介できるであろうか。
 

福岡健一さんが運営するウェブサイト「駅弁資料館」はこちら
⇒ http://eki-ben.web.infoseek.co.jp/


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