田部康喜のTV読本

2019年5月9日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 テレビ東京「きのう何食べた?」は、西島秀俊と内野聖陽の実力派俳優が、ゲイのカップルを演じるラブコメディである。LGBTを題材にしたドラマが増えているなかで、ちょっと深刻なテーマも、ふたりの会話と毎回異なる食事が絡み合って、しゃれた後味の佳作である。

(Creatas / Creatas / Getty Images Plus

 原作は、よしながふみの同名のコミック。「シロさん」こと弁護士の筧史朗(西島秀俊)と、「ケンジ」こと美容師の矢吹賢二(内野聖陽)はひょんなことから、シロのマンションでふたり暮らしを始める。ケンジは、職場の人たちにゲイであることをカミングアウトしている。シロの両親は、彼がゲイであることに理解を示しているが、職場では独身男性で通している。

 西島秀俊はいうまでもなく、「MOZU」(TBS、WOWOW)や「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(関西テレビ)など、刑事を演じさせたら第一級のアクションスターである。内野聖陽は、舞台俳優としての実績を積み重ねながら、映画とドラマにも活躍の場を広げている、日本を代表する俳優である。

ドラマの成功は、ふたりのキャスティングに拠っているのは勿論である。セリフの掛け合いはときに、アドリブではないかと思わせる絶妙さである。

ひと月の食費は2万5000円

 ♯5「濃厚味噌ラーメン」(5月3日)。シロは、父・悟朗(志賀廣太郎)が入院、手術をしたために実家に帰ったところ、母・久栄(梶芽衣子)から「四十五歳にもなったのだから、老後の備え、老い支度をしなさい」といわれる。自宅のマンションに帰って、ケンジに愚痴をこぼす。

シロ  老い支度なんていわれると、苦行でしかないよ。

ケンジ シロさんはちょっとぜいたくだよ。ゲイは恥ずかしことじゃないって受け入れてくれる、お母さんは偉いよ。感謝したほうがいい。親孝行したほうがいいよ。

 シロはケンジがおこったと思う。心のなかでつぶやくのだった。(そういえば、あいつの実家でどこだっけ? 聞いたことがなかったな)

 ふたりの暮らしは、料理をシロが受け持っている。シロはふたりでひと月の食費は2万5000円に切り詰めようとしている、節約家である。ケンジと口論めいた一幕があった、その夜の食事。食卓には、ケンジが好物のあんかけチャーハンなどがずらりと並ぶ。仲直りのつもりである。いつもは、健康とダイエットを心掛けているシロは脂っこいメニューをあまり作らない。

ケンジ あのねシロさん、今朝、俺……

シロ  俺さ、大晦日、家に帰ることにしたよ。
    やっぱうまいな、あんかけチャーハン。

ケンジ こってりメニューって最強だよね。

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