海野素央の Love Trumps Hate

2019年5月10日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプ訪日と危険要因」です。ドナルド・トランプ米大統領は、ロシア疑惑に関する捜査結果「モラー報告書」をまとめたロバート・モラー特別検察官と、同大統領の司法妨害のカギを握るドン・マクガーン元大統領法律顧問の議会証言を必死に阻止しています。

 仮にモラー・マクガーン両氏の議会証言が実現した場合、トランプ訪日及び日米関係にどのような影響を及ぼすのでしょうか。本稿ではトランプ訪日に伴う危険要因を探ってみます。

9日、昨年のワールドチャンピオン、ボストンレッドソックスの訪問を受けたトランプ大統領( REUTERS/AFLO)

トランプの「政治的煙幕」

 モラー報告書は、トランプ陣営とロシア政府との共謀は認定できなかったと結論づけました。しかも、ウィリアム・バー米司法長官はトランプ大統領の司法妨害に関しても、証拠不十分として、「シロ」と結論を下しました。

 しかしモラー報告書には、トランプ大統領にとって不都合な内容が詳述されています。たとえば、同大統領がモラー特別検察官の解任をマクガーン元大統領法律顧問に指示したこと、ジェームズ・コミー元米連邦捜査局(FBI)長官に自分が捜査対象ではないと公表するように迫ったこと、トランプ陣営がロシアの情報機関と関連のある人物とニューヨークで米中西部における選挙戦略について情報交換をしていたことなどが、事実として明記されています。

 さらに、トランプ政権で司法長官代行を務め、約30年間にわたり検事の経験があるサリー・イエーツ氏の発言も、トランプ大統領にとって不利に働くことは明らかです。イエーツ氏は、米NBCニュースとのインタビューの中で、モラー報告書を「(トランプ大統領にとって)致命的な描写」と表現し、同大統領は「潔白ではない」と強調しました。

 そこでトランプ大統領は、米国民の目をモラー報告書の内容から逸らせる戦略に出ました。2016年米大統領選挙において、「米情報機関がトランプ陣営に対してスパイ行為をした」と主張したのです。そのうえで、「クーデターを試みたが失敗した」「ウォーターゲート事件よりも重大だ」と語気を強めて語り、情報機関の職員を「人間のクズだ」と呼んで激しく非難しました。

 「トランプ陣営にスパイを送り込んで、でっち上げのロシア疑惑の捜査を行ったモラーチームの捜査員こそ捜査されるべきだ」「ワシントンの情報機関は沼のように腐っている」というメッセージを発信しています。要するに、「政治的煙幕」を張り、モラー報告書の内容から情報機関によるトランプ陣営へのスパイ行為に米国民の関心をはぐらかそうとしているのです。

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