ヒットメーカーの舞台裏

2011年12月15日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 便器のフチや便座、床などトイレまわり用のクリーナーで、トイレットペーパーを使って手軽に掃除できるようにした。洗剤にはトイレットペーパーを崩れにくくする成分を配合しており、ヒットにつながる大きな要因となった。今年3月に発売し、半年間の販売実績は計画を3割上回っている。

ライオン 「ルックまめピカ トイレのふき取りクリーナー」

 スプレーノズルから出る泡状の洗剤をトイレットペーパーに取ったり、便器などに直接吹き付けたりして使う。210ミリリットル入りの容器は小ぶりだが、毎日使用しても3カ月程度はもつという。実勢価格300円前後という安さも受けている。

 2008年末に開発に着手、商品企画はリビングケア事業部副主任部員の横手弘宣(33歳)が担当した。ライオンには便器用の洗剤として「トイレのルック」というロングセラー商品があるものの、トイレまわり用の洗剤は欠けており、パンチ力のある新製品投入が課題となっていた。

 横手は「トイレ掃除はネガティブな作業というイメージから脱し、『家族みんなで気軽に掃除できる』というコンセプト」を設定し、商品化に着手した。このため、当初は洗剤の香りを優先したという。洗浄力が重視されるトイレ分野では、あまり注目されないところだが、掃除が苦にならないようにという配慮からだった。

 ところが、同社のモニターなどを対象にした調査によると、もっと重視すべきニーズが潜んでいた。汚れに気付くとトイレットペーパーやトイレ用掃除シートを使って「さっとひと拭き」するという主婦の行動だった。全体の約6割がそうした掃除をしており、さらにそのうちの6割の人がトイレットペーパーを使っていることが分かった。

 こうしたトイレまわりの掃除用には、洗剤や除菌剤が含まれ、使用後はトイレに流すこともできる専用のシートが市販されている。だが、「経済性」を理由に多くの主婦はトイレットペーパーを活用している。ただし、トイレットペーパーは水分を含むとボロボロに崩れるので、「大半の方がそこに不満をもっていることも判明した」(横手)のだった。

トイレ洗剤では異例のアップルの香り

 実は、こうしたトイレットペーパーの使われ方自体は、同社はかねて把握しており、紙のボロボロ対策についても08年ごろから研究所で開発に着手していたのだという。今回の調査によって「さっとひと拭き」の実態がよりつまびらかになり、先行研究の成果が生かされる機会が巡ってきた。

 トイレットペーパーには、水分を大量に含むとバラバラに崩壊する機能をもたせている。紙の一つひとつの繊維同士の結合を弱くし、水によってその結合が解かれるというメカニズムである。研究所では、水分を含んでも結合がやや長めに持続する組成の開発を進め、必要な素材をつきとめた。素材はごく一般的なものであり、トイレで流してもまったく問題ないものだという。

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