中東を読み解く

2019年5月11日

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 ペルシャ湾を舞台に米国とイランの軍事的緊張が高まりを見せてきた。米空母エーブラハム・リンカーンが派遣され、戦略爆撃機B52編隊もカタールの米軍基地に到着した。イラン指導部が米国への“挑発”を指示した、との情報が米軍増強の引き金になったと見られているが、事はそう単純ではないようだ。イランとの戦争を画策するような陰謀臭が漂っている。

9日、アメリカに抗議するテヘラン市民(AP/AFLO)

ダウ船からのミサイル攻撃情報

 軍事的な緊張が高まったのはトランプ政権のイランに対する“最大圧力”政策によるところが大きい。1年前にイラン核合意から離脱したトランプ大統領は4月8日、イラン革命防衛隊をテロ組織に指定、同22日にはイラン産原油禁輸の適用除外措置の打ち切りを発表した。

 原油禁輸の適用除外を受けていたのは日本や中国など8カ国。この措置の打ち切りは、通貨下落、インフレ、失業率の増大という三重苦に悩むイランにとっては大きな打撃だ。追い込まれたイランのロウハニ大統領は5月8日、核合意の一部履行停止に踏み切り、このままでは核開発再開もいとわない、という捨て身の一手を打ち出さざるを得なかった。

 しかし、トランプ大統領はこのイランの決定に対し、同国の輸出の1割を占める鉄やアルミニウムなどの金属取引を新たな制裁の対象にする大統領令に署名、イラン包囲網をさらに締め付けた。大統領は「イランがすべきなのは私に電話し、話をすることだ。彼らに多くのことを求めているわけではない。核兵器を保有させたくないだけだ」と事実上、イランの全面屈服を要求した。

 こうした政治的な対立が先鋭化するにつれて軍事的緊張も高まった。火を付けたのはボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)だ。補佐官は従来からイランへの軍事行動を主張してきたタカ派であり、ブッシュ政権下でイラク侵攻を主導した1人だ。補佐官は5月初旬、イランに米軍などへの攻撃を仕掛ける「危険な兆候」があるとして、ペルシャ湾へ空母を派遣したことを明らかにした。

 ボルトン補佐官の発言通り、空母エーブラハム・リンカーンが10日、スエズ運河を通過して紅海に入り、ペルシャ湾へ向かっている。この他、戦略爆撃機B52編隊もカタールの米軍基地に到着した。米NBCテレビによると、米軍が軍事圧力を強めているのは、イラン指導部が中東の複数の武装勢力に対し、米軍や施設への挑発行動を指示した、という情報があったからだという。

 米軍は特に、ペルシャ湾を航行する木造のダウ船からのミサイル攻撃や、イラン支援のシーア派民兵組織がイラク駐留部隊に攻撃を仕掛けるのではないか、と警戒を強めているという。ダウ船に移動式ミサイルの発射装置を積んだ形跡もあるとされる。米メディアによると、こうした“信頼すべき情報”はイスラエルからもたらされたとしている。

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