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2019年5月12日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

工場から直接仕入れ

 山田代表は、かねてから繊維産業で製造された約半分に相当する9200万トンもの服が世界で着られることなく廃棄されている現状を憂慮してきた。これを一人当たりにすると年間約175キロもの服が捨てられている勘定になるという。「製造するために大量の水やエネルギーが使われており、アパレル業界は膨大なエネルギーを無駄に消費している」と話し、これをなくすためには「愛着を持って服を着てもらうことだ」と指摘。

 そのためには、「どの工場でどんな作られ方をしているかを消費者が知ることだ」と訴える。実際に同社の洋服には、すべての商品に製造された工場名が明記されている。また工場を知ってもらうため、契約している工場を実際に見学する工場ツアーも何度も行っている。

 同社の特徴は、製造する工場から直接製品を仕入れるやり方だ。いままでは工場で製造された商品は中間卸などいくつかの流通業者が中間に入っていたが、ファクトリエは中間流通を排除した方式を採用している。すでに全国55の工場と製造契約を締結、創意工夫で価値を創造して、作る側も売る側も利益の出る価格で売っていくシステムを確立している。そうすることで、大量の着られない洋服在庫を抱えて大量処分が繰り返されるアパレル業界の「悪しき伝統」を変革したという思いがある。

地方創生にも役立つ

 このプロジェクトについて、南アルプス市の依田賢治農政課長は「南アルプス市は遊休農地の流動化を進めてきたが、コットンプロジェクトのように企業が促進してくれれば、遊休農地の解消につながる。またそこで作られたものが製品化につながれば新たな魅力につながるので、今後も積極的に行ってほしい」と評価している。

 また住友生命保険は「このプロジェクトは地方再生に役立つ」として支援することを表明、企業の中には自社の直接的な利益にはつながらなくても、こうした取り組みをサポートするところも出てきている。

 繊維の原料である綿の栽培を、草の根レベルの個人が支援しようというこのプロジェクトは、1件ごとの規模は小さく地味ではあるが、こうした取り組みがファッション業界に広がれば、農産物の地産地消にもなり、地方創生の新しい方式となる可能性がある。

  
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