WEDGE REPORT

2019年5月14日

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 サッカーJ1のヴィッセル神戸が泥沼にはまり込んでいる。12日の鹿島アントラーズ戦で2003年の延長Vゴール廃止後としてはクラブ史上ワースト記録に並ぶ、屈辱の6連敗。本拠地のノエビアスタジアム神戸にはサポーターがゴール裏に居残って試合後の約1時間、三浦淳寛スポーツディレクターらクラブ側に不満をぶちまける〝異常事態〟も発生した。ただ、ここに至るまでの経緯を顧みれば、サポーターが怒りを爆発させるのも無理はない。

元スペイン代表・MFアンドレス・イニエスタ選手(築田純/アフロスポーツ)

 元ドイツ代表・FWルーカス・ポドルスキ、元スペイン代表・MFアンドレス・イニエスタに加え、今季からは元スペイン代表・FWダビド・ビジャも獲得し、峠を越えたとはいえ「総額41億円」ともささやかれる世界的スーパースター3選手を前線に揃えた。この余勢を駆ってクラブ側が今季のJ1初制覇とアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権獲得を声高らかに掲げたのだから、サポーターも胸を高鳴らせるのは当然のことだった。

 ビジャだけでなく今季からは同じスペインから元FCバルセロナの若きMFセルジ・サンペールも獲得。いわゆる「バルサ化」の路線をまい進する流れに一層の拍車がかかった。

 しかも昨季のベストイレブンに選出された日本代表・DF西大伍を鹿島から、同じく日本代表・MF山口蛍もセレッソ大阪から完全移籍で今季の新たなメンバーとして加えた。まさに国内外のスター選手たちを方々から根こそぎ、かき集めて来る〝乱獲〟だった。

 この豪華絢爛のスター軍団となった今季の神戸で指揮を執ったのは、スペインのリーガ・エスパニョーラや南米の名門クラブで監督を務めるなど輝かしい経歴を持つ就任2年目のフアン・マヌエル・リージョ氏。プレミアリーグのマンチェスター・シティFCで現在タクトを振るい、欧州各クラブで様々なタイトルを総ナメにした名将ジョゼップ・グアルディオラ監督がリージョ氏を師と仰ぎ、絶賛しているのは有名な話だ。

 だが、一時は将来的に日本代表監督への就任を狙っているとまで言われ、優れた戦術をとるはずの知将も、この世界的に見て〝超特殊〟なクラブチームの中では宝の持ち腐れとなってしまった。

 先月17日、クラブ側を通じて突如辞任。「私と家族にとってはこうすることがベスト」という内容のコメントが出されたものの詳細については触れられておらず、ウヤムヤが残る辞任劇だった。その当時第7節の時点での成績は3勝1分3敗の10位で中位に甘んじていたとはいえ、まだ巻き返しも十分可能な段階だ。それだけにクラブ側とリージョ氏との間に何らかの軋轢が生じていたのは明らかであった。

 この前監督・リージョ氏にとって皮肉にも大きな〝ネック〟となってしまっていたのが、かつて自らを積極的に招聘したはずの三木谷浩史会長だったと噂されている。ただでさえ、これだけ豊富なタレントが一気に増えれば在籍中の韓国代表・GK金承奎も含め特に外国人選手枠のエントリー(出場)で指揮官やコーチングスタッフが頭を悩ませるのは必然だ。クラブ周辺からは、こんな声が聞こえてくる。「そうした中で会長がリージョに対し、メンバー起用であれこれと注文をつけていたらしい」。

 サッカー指導に関してプライドを持っていたリージョ氏が第三者から四の五の言われ続けたことで自分のやりたいサッカーができなくなってしまい、このまま指揮を執り続けても不本意な結果に終わって恥をさらすだけだと自ら早めに悟り、身を引く決断をしたのではないか……という憶測だ。

 このリージョ氏の突発的な辞任が、さらなるドミノ崩壊を招いた。ポドルスキが指揮官の辞任劇を受け、キャプテンの座から降りることを表明。フロントもしくは幹部をチクリと刺すような批判めいたツイートをして大騒ぎになったのは記憶に新しい。

 そのポドルスキとイニエスタ、そして今季から新しく加わったビジャ、そしてサンペールもほとんど機能せず、期待されたパフォーマンスを見せることができていないのだ。「バルサ化」と言えば聞こえはいいが、いくら大枚を投じて補強を重ねてもネームバリューばかりが先走りし、肝心のヴィッセルが目指すサッカースタイルにフィットできていなければ何の意味も成さない。 

 それでいて期待の欧州勢助っ人たちが満足なプレーを披露できず、コンディション不良にも悩まされる姿を見せられると「莫大なカネをもらうだけ貰っておいて、実は手を抜いているのではないか」と、疑惑を向けられても仕方がないだろう。

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