WEDGE REPORT

2019年5月16日

»著者プロフィール
著者
閉じる

宮川公男 (みやかわ・ただお)

一橋大学名誉教授、麗澤大学名誉教授、元(財)統計研究会理事長。著者に『基本統計学』(有斐閣)、『政策科学の基礎』(東洋経済新報社)、「統計学でリスクと向き合う」(東洋経済新報社)、「統計学の日本史」(東京大学出版会)など多数。

 5月16日、日本を代表する平均株価である日経平均が、その前身である東京証券取引所の株価指数(東証ダウ)が1949年5月16日に176円21銭でスタートしてからちょうど70周年を迎えることになった。米中貿易戦争の様相が深刻化する中、お祝いをしている場合ではなく、むしろ今後の株価下落に加え、日経平均の構造的な問題が、その下落幅を一段と増幅するのではないかと私は憂慮している。

(zoom-zoom/gettyimages)

 新しい令和の年代がスタートし、10連休明けの5月7日に最初の取引が始まった東京の株式市場では、日経平均は4日連続の下落で、平成の最終日比で約4.1%、900円をこえる大きな下げ幅であった。ニューヨークのNYダウ平均(DJIA)も同じ週に大きく下落したものの、その下げ幅は2.1%、約562ドルであり、東京の半分ほどであった。日米ともに米中間での関税をめぐる貿易争いでのゆくえを懸念した下げであったが、ここではあらためて日本経済の中国依存が米国にくらべてずっと大きいことが感じられた。

 しかしこの差には、日経平均とNYダウという二つの比較指標の性質の差も関係していることが一般にほとんど理解されていない。特に日経平均が抱えている重大なジレンマについて今後じりじりと問題が悪化することを指摘する専門家もいないことが懸念される。 この問題を一言でいうと、日経平均は大きい値のデータ(株価の高い銘柄)によって大きな影響を受けるということである(詳しくは『〝5桁クラブ〟に振り回される、日経平均の不都合な真実』を参照)。

 この問題は、本来単純算術平均型(データの単純な合計を分子とし、分母をデータの数にして割り算で求める)である日経平均も、NYダウも共通に抱えている問題であり、「価格ウェイト問題」と呼ばれているものであるが、採用225銘柄の株価の日経平均と30銘柄のNYダウの場合では事情は大きく異なる。

「ファストリ指数」

 日経平均の場合には225銘柄間で株価には2桁の銘柄から5桁の銘柄まで大きな価格差がある。例えば、採用225銘柄のうち株価が5桁で現在50,000円台で他に飛び抜けて高いファースト・リテイリングを筆頭にファナックなどの5桁高株価銘柄の動きが平均株価を大きく左右しているということである。このことは日経平均が「ファストリ指数」とさえいわれているほどだ。

 それに対して、NYダウの場合には30銘柄のすべてが2桁あるいは3桁の株価である。このことを私は日経平均における「5桁クラブ」問題と呼んでとりあげたのである。

 NYダウよりも日経平均の方が問題ははるかに大きいのであるが、日経平均の場合には、2005年6月に本来のダウ式平均から離脱を始めたという付加的要因により問題の悪化がさらに大きく進んでいる。それは「みなし額面」問題であり、この問題は日経平均の存続に関わる基本的な問題であるにもかかわらず、日経だけでなく、広く証券界および関係専門学会にも今日に至ってもあまり認識されていないという事実に私は驚かざるを得ない。

関連記事

新着記事

»もっと見る