<短期連載>ペット業界の舞台裏

2011年12月16日

»著者プロフィール

 ブリーダーは育種自体を商売にしているというよりも、自分が求める形や特性を追求し費用と時間をかけている方が多いようです。業として人気の他犬種を少数ですが販売目的に繁殖させている場合もありますが、例えば私がお手伝いしている犬のブリーダーでは飼育頭数も自分が管理できる範囲内(20頭まで)、産ませるのも年に1度、販売時期も生後3カ月以上と決めており、これらは犬という生きものを健全に育てるために最低限必要な管理であるとの経験や知識から行っています。もちろん親となる犬達の健康管理や遺伝的な状態も把握してから繁殖するのも当然のこととして行っています。育種を経験した方でなければ分かりづらいことですが、意外と大変な労力と費用がかかってしまうものです。

 母犬は個体差もありますが年に2回のヒート(発情)の時期があり、この期間中(約2週間)だけ受胎することが出来ます。良い時期に父犬と交配をさせ、子供が出来ます。産まれるまで約2カ月、食事の管理や運動に気をつけながら出産に向けて調整を行います。子どもが産まれて約1カ月間、母犬はつきっきりで子育てをします。母乳をあげ、排泄物をきれいに舐めとり、それはもう甲斐甲斐しく世話をするのです。この期間、母子がいる環境を整えてあげることと母犬の食事に気をつけることが人の仕事の全てですので、労力はあまりかかりません。

 生後30日を過ぎた頃からは子犬の離乳が始まります。離乳食を一日3~4回与え、この時期になると当然足も知能も発達してきますから行動範囲も広がります。行動範囲の排泄物を掃除し、誤飲誤食を防ぐためさらに環境を整えたりと人の手で行う世話が増えてきます。ほぼ離乳が終わる生後2カ月月頃、虫下しやワクチン接種など医療系の管理を行い、母犬主体の生活から兄弟や人間との生活へ環境に慣らせていき、新しい飼い主のもとでの生活への順化(社会化)を促します。ちなみにヒートの時期から出産の日時、子犬の成長や体調など時間も季節も決まりはありません。犬は毎日食事も排泄も運動もしますので、人間の休日や時間など無視しての作業となります。

年中無休、24時間稼動で年収360万円

 交配から子犬を譲り渡すまでの5カ月間、休日も時間も関係なく働いて、例えば20頭の母犬が平均4頭子犬を産んだとして、年に80頭の子犬が商品となります。全ての子犬が15万円で売れたと仮定すると年収1200万円、親犬の食事代や管理に月額3万円平均で年額600万円、子犬の医療費や管理費が3万円平均で80頭240万円、差し引き360万円。金額はあくまで小型犬種での経験上のものですが、真面目に繁殖をさせた場合これが年収となります。出産の可否や子犬の頭数、子犬の金額などに確定要素はありません。収入の根拠もなく年中無休、24時間稼働でこの現実です。命を扱う仕事は金額以上の魅力を感じないと出来ないことなのです。

 一方、「繁殖屋」は効率的に繁殖を行います。「効率的に繁殖をする」ということは、経費を出来る限り削減し、多くの商品を産ませ、早い時期に売りに出すということです。パピーミルと呼ばれる最悪のケースでは、たとえば売れ筋の犬種を100頭単位で集め、ヒートが来るたびに交配をさせ産ませられるだけ産ませます。なるべく人手と経費をかけないよう、ケージ等へ入れたまま食事も排泄も出産から育児まで全てそこで行わせ、運動や散歩も行いません。親が足りない時は産まれた子犬の雌を残して、初回のヒートから代雌(母犬)として子供を産ませるために育てます。種雄(父犬)は最低限の頭数しかいませんので、親子や兄弟で交配する場合も稀ではありません。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る