立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年5月21日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

「超エリート」も路頭に迷う就職氷河期の到来

 5月中旬、私の留学先母校である中欧国際工商学院(CEIBS=China Europe International Business School)から1通のメールが届いた――。

 「卒業生先輩各位、目下の卒業シーズンに際して、経済低迷の影響を受け、本学では34名の2019年度のMBA学生がまだ就職先を探しています。何とか卒業生先輩の皆様から、就職の機会を賜りますよう、諸般のご配慮をお願い申し上げます。

 今年の就職情勢が大変厳しく、まさに氷河期にあたります。本学就職課の最新データによりますと、従来本学の卒業生をもっとも多く受け入れてきた3大業界の求人が軒並み急減しています。金融業は13%、製造業は7%、そしてMBA卒業生向けのマネージャー候補職は25%も大幅減少しています。市場の萎縮を受け、企業は経験者の中途採用に絞り込み、新卒のMBA学生にとってまさに受難の時代になってしまいました……」

 中欧国際工商学院(CEIBS)のMBAは、英フィナンシャル・タイムズ紙のランキングでは、アジア1位、世界5位という中国人エリートを輩出する名門である。これまで就職に関しては、全員が全員引っ張りだこまでいかなくとも、悲鳴を上げるほど困るようなことはなかった。ましてOB・OGにこのようなメールが送られてきたのは異例と言える。

 中国経済の深刻さがしみじみと伝わってくる。しかし、これはまだ序の口である。中国人民大学が4月に発表した「中国就職市場景気報告」によると、1~3月期の就職市場景気指数(CIER指数)は5年ぶりの低水準となった。同期の中国の求職申請者数は前期比31.05%増で、一方、企業側の求人数は同7.62%減少。CIER指数は1.68ポイントまで下がり、2014年以来の低水準となった。

 同期の中国民間企業の求人数も前期比で13.05%減少。求職申請者数は同52.94%増で、CIER指数は0.8ポイントとなった。前期の1.41ポイントから大幅に落ち込んだ。同期の国有企業のCIER指数は、求職申請者数が大幅に増えたことで、0.43ポイントに低迷。「1つのポストに対して、求職者2人が競い合っている」状態であるという。

 中国では今年、過去最大となる約834万人が大学を卒業する見通し。米中貿易戦争の激化に伴い、外資企業の撤退だけでなく、中国系製造業もアジアへの移転に動き出している。リストラの急増とともに、新卒の需要が大幅減少している。中国にとっては経済よりも失業問題が最大の危機となるだろう。

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