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こうして彼らは不登校から翔びたった―子どもを包む、3つの言葉
比嘉 昇 著

目次 立ち読み

震災以降、私たちはより「絆」を意識するようになったのではないでしょうか。人は一人では生きていきません。だからこそ、「人と人のつながり」がとても重要なのです。
全国に不登校の小中学生が約11万5,000人います。中学生でいえば、37人に1人が不登校なのです。日本はいつから「不登校が当たり前」で、子どもたちを待つ時間を許さない国になってしまったのでしょうか。
著者は、中学校の校長を定年退職後、不登校の子どもたちのために、フリースクール「夢街道・国際交流こども館」を設立し、10年を迎えました。「子ども館」では、子どもたちを「信じ、待ち、愛する」ことを大切にし、彼らが少しずつ自信を取り戻す手助けをしています。「子ども館」での心の交流を通して、人と人のつながりの大切さを感じられる一冊です。

<書籍データ>
◇四六判並製、214頁 
◇定価:1,470円(本体1,400円+税)
◇2011年12月20日発売

<著者プロフィール>

比嘉 昇(ひが・のぼる) 
1940年生まれ。高校卒業後、製鉄会社などに勤務ののちに、28歳で大学に入り、32歳で教師となる。以後、奈良市内の小中学校の校長を歴任し、2001年に定年退職。02年に不登校の子どもたちのフリースクール、NP0法人「夢街道・国際交流子ども館」(京都府木津川市)を設立し、理事長に就任。館長の冶代夫人やスタッフと共に、不登校の子どもたちと喜怒哀楽を共にする日々を送っている。

 

 

 

<立ち読み>

忘れられない光景があります。
私が小学2年生のクラスの担任をしていたとき、伸夫という子がいました。明けても暮れても体を動かすことが大好きで、とりわけ相撲が強いやんちゃ坊主で、仲間からも人気がありました。
私のクラスでは、全員が九九を5分で計算できるようになろうという目標を掲げていました。けれど、いつまでたっても伸夫だけがクリアできませんでした。当時、伸夫のお父さんは会社が倒産して失業中で、お母さんは中華料理屋さんでパートの仕事を夜遅くまでやっていました。親がついていなければ、2年坊主ひとりでは、なかなか九九の勉強なんてできるものではありません。そんな背景がありました。
あるとき、私は子どもたちに、あえて一石を投じてみました。「あのな、これ以上九九の百マス計算やっていると、次の単元進めへんから、もう伸夫は置いていこうか」。すると7歳か8歳にすぎない子どもたちが、「先生、待って。僕らがやる」と言ったのです。「どうやって伸夫に教えるねん?」「僕ら、ちゃんと休み時間にやるやん」と。
その日から、時間のある限り、クラスの子どもたちが伸夫に特訓を始めました。何日かして、職員室に飛び込んできた子どもが叫びました。「先生、やったで。伸夫、5分クリアできた!」。その日の給食の時間は、全員が牛乳瓶で乾杯です。伸夫だけではなく、クラス中の子どもたちの顔が、達成感に満ちていました。
子どもは、子どもを見捨てません。仲間を助け、優しい言葉をかける柔らかさを生来持っていると、私は確信しています。見切り発車するのは、大人です。

 いま、全国に不登校の小中学生は約11万5,000人います。中学生でいえば、37人に1人が不登校ということですから、日本中の中学校のどのクラスにも、学校に行けない・行かない生徒が1人いるという計算になります。不登校の高校生も5万3,000人にのぼるということですが、実際は統計から漏れている子もたくさんいるはずです。(文部科学省の2010年調査)
以前ある精神科医が、「いわゆる『ひきこもり』は日本中でおよそ140万人いると推測している」、と書いている新聞記事を読みました。私が教員として勤めた奈良県の人口が、ちょうど同じくらいです。人数をイメージするなら、生まれたばかりの赤ちゃんからお年寄りまで、奈良県に暮らす人のすべてが「ひきこもり」ということになります。
どうして日本は、不登校が「当たり前」の国になってしまったのでしょうか。
──「序章」より

 

(続きは本書でお読み下さい)

 

 


<目次>

 

はじめに  人生の師、比嘉先生 (元日本代表シンクロチーム・ヘッドコーチ 井村雅代)

 

序章 私の原点
不登校が「当たり前」の国 (立ち読み)
校長としての忸怩たる思い
10年遅れの新米教師
子ども館の毎日
信じる、待つ、愛する

第1章 信じる
嘘をついた、でも、謝れた
土からもらった元気
依利子が自信を取り戻すまで
犯人捜しでは、いじめはなくならない
許すことと、甘やかすこと
大人の自信喪失が子どもに伝わる
子どもを追い詰める一言
なりたい自分と、なれない自分
屈しているから個性が伸びる
「学校へ行けば欲しい物を買ってやる」
「社会に出るのが怖い」
二人の野球部監督
「出る杭」になって何が悪い 
しおりが見つけた安心感

第2章 待つ
久美の冬、久美の春
大人の建前と子どもの本音
今日はここまでできればいい
大人は子どもの時間泥棒
宿題は「テレビを見ないこと」
押さえつけても、生きる力は育たない
「お前のため」に愛情はあるか
焦らなくていい、時間という未来がある
子どもの教育は投資じゃない
仲介役から卒業した美帆
紆余曲折を選んだ圭梧のプライド
二人の教え子の結婚式

第3章 愛する
朋玄は「わが家の居候」      
丸ごと認めることが愛情の原点
駿が抱いた小さな夢
食欲とは生きる意欲
聖平を支えた「食べなアカン」
働くことの意味って
高校生だから抱く疑問
子どもたちに誓う 「命こそ宝」
人を死に追いやる日本の現実
平和な社会へ、大人たちの責任
親の過剰なコントロール
外で遊べよ、子どもたち
夏休みだからできること
井村コーチは明るく厳しく
欲求は子どもが生きる源
忘れちゃいけない感謝の気持ち
損得なしに生きる人たち
歴史を暗記科目にしないで欲しい
ねじれた親子関係 
愛情の確かなバトンタッチ
日本の親子、捨てたものじゃない


あとがき

 

 

 

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