WEDGE REPORT

2019年5月24日

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欧州全土に広がった「疑惑」の眼

 ビデオの公表を受け、シュトラーヒエ副首相は18日、直ちに副首相及び自由党党首を辞任した。セバスティアン・クルツ首相は翌19日、ファン・デア・ベレン大統領と善後策を協議、大統領は今秋にも総選挙を行うべきであると主張した。続いて20日、クルツ首相は捜査及び情報機関を管轄するヘルベルト・キックル内相を更迭したが、自由党はこれに反発、同日、同党の全閣僚引上げで対抗し、ここに、国民党と自由党による連立が、発足以来1年半足らずで崩壊することとなった。

 衝撃は直ちにヨーロッパ中に走った。ポピュリスト政党とロシアの不透明な関係はかねてから噂されていたが、ここに、資金供与と公共事業の見返りという生々しい形で明らかになったのだ。更に、衝撃的だったのは、ロシアが欧州の報道機関に手を回そうとしていたことだ。

 早速、欧州議会のCDU/CSUグループ代表ダニエル・カスパリー氏は、同様の事例は「ドイツのための選択肢(AfD)」にもある、AfDは出所不明な選挙資金を受け取っている、と糾弾した。これに対しAfDの共同代表ジェルク・モイテン氏は、今回の事件は自由党が犯した大きな間違いであり、自由党の個別の問題だ、と反論した。

危険を嗅ぎ取っていた欧米諸国

 シュトラーヒエ氏とロシアとの関係は、古く同氏が自由党党首に就任した2005年頃まで遡る。その後、同氏はロシアとの緊密な関係を維持してきたが、2016年、自由党とプーチン大統領の党である「唯一のロシア」との間に友党関係を締結するに至った。党運営、立法の仕方等に関し情報交換することが謳われた。2018年、カリン・クナイスル外相の結婚式にわざわざプーチン大統領が出席、花嫁(クナイスル外相)とダンスを踊った写真が公開されたことは記憶に新しい。

 クルツ首相は、自由党とロシアのそういう緊密な関係を承知で、同党に内相や国防相といった国の安全にかかわるポストを提供した。秘密情報機関も当然、自由党が握った。当時、クルツ首相のこういう対応に批判が集中したが、同首相は自由党との関係を優先し押し切った。

 しかし、2018年2月、内務省が憲法擁護テロ対策庁の捜索を強行したことを受け、欧米の情報機関はオーストリアとの情報共有見直しに踏み切った。当時、同庁は、ロシアによるオーストリア内政への関与を調査していた。欧米諸国は自由党とロシアのただならぬ関係を嗅ぎ取ったのだ。

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