海野素央の Love Trumps Hate

2019年5月30日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

横須賀基地を訪問したトランプ大統領( REUTERS/AFLO)

 今回のテーマは、「トランプ訪日で見えてきたこと」です。

 ドナルド・トランプ米大統領は3泊4日の訪日を終え、帰途に着きました。トランプ訪日の隠された議題であった「選挙協力」の目途は立ったのでしょうか。27日の日米首脳会談後の共同記者会見におけるトランプ大統領の言動から、何を読み取ることができるのでしょうか。本稿では、記者会見中の安倍晋三総理の表情も分析し、トランプ訪日で何が見えてきたのかについて解説します。

金正恩とジョー・バイデン

 トランプ大統領は日米首脳会談後の共同記者会見で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、2020年米大統領選挙で民主党の最有力候補とみられているジョー・バイデン前副大統領を「IQが低い人物」と呼んだと紹介しました。そのうえで、「金委員長の評価に同意する」と述べました。前日の自身のツイッターにおいても、「金委員長はバイデンをIQが低くてダメな男と呼んだ」とつぶやいて攻撃をしています。

 トランプ大統領は、金委員長はバイデン氏よりも自分を信じているといいたいのです。

 加えてトランプ大統領は、今月発射された北朝鮮の短距離弾道ミサイルについて「気にしていない」と自身のツイッターに投稿し、しかも「北朝鮮は国連安保理決議に違反しているとは思っていない」と語りました。一方、バイデン氏は国連安保理決議違反の立場をとっています。

 日米首脳会談の冒頭、トランプ大統領は北朝鮮問題に関して「2年前と比べると大きな改善だ。私が大統領に就任したときは、北朝鮮は核実験やミサイル実験を行っていた」と主張し、成果をアピールしました。

 これらの一連の発言の裏には、トランプ大統領のある懸念が隠されています。

 北朝鮮との関係が悪化し崩れると、ライバルのバイデン氏にこれまでの米朝関係のクレジット(手柄)を奪われる可能性が出てくるからです。そこで、トランプ大統領はバイデン氏から独裁者である金委員長を守るという異例の行動に出ました。もちろん、米大統領が外遊中に政敵を攻撃することも異例です。

 

 次の米大統領選挙に民主党から20人以上が立候補していますが、バイデン氏を低く評価した金委員長に対する「同意発言」から、トランプ大統領は同氏をかなり意識していることがはっきり読み取れます。

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