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2019年6月7日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 定食専門店を運営する大戸屋が海外出店を加速させている。現在ある114店を約3年後には200店にまで増やす計画で、牛山浩一海外事業部長は「今後はアジア地域を中心に店舗を増やし、海外の割合を全社売上の3分の1(現在約13%)にしたい」と述べ、海外事業の拡大に強い意欲を示した。

試行錯誤続く

ニューヨークタイムズスクエア店

 海外の店舗展開は直営とフランチャイズ(FC)方式の2通りがあり、13店舗が直営で101店舗がFCだ。FC店はタイに46店、台湾に38店、インドネシアに15店、上海1店、ベトナム1店などアジア地域中心。直営は香港5店、米国(ニューヨーク)4店、シンガポール3店、タイ1店。売上比率では直営店が80%以上を占め、顧客1人当たりの売り上げ単価も高く、FC店と比較して利益率も大きい。

 海外事業の店舗運営の基本は、最初は直営で行い、同社の運営方針を現地店に十分に伝えて指導を行う。これが軌道に乗った時点でFCに移行させるやり方を踏襲してきた。しかし、ベトナムのホーチミンでは最初からFCで店舗展開したが行き詰まり、7月初めに新たに直営店で出直すことになった。牛山部長は「これまでの経験を生かして、最初からFCで行けると思ったが、やはり無理だった」と反省、試行錯誤が続いている。ホーチミン店については、7月3日にトップが出席してオープンセレモニーを開いて直営店に戻って再スタートする。

台湾(大戸屋ごはん処新光三越南西店)

 基本的な店舗運営は、調理材料は日本から送り、店で調理して提供する。コメや野菜などは現地産を使用するが、魚などは海外で取れたものを使う。アジアといっても国によって食習慣が違うため、食べ方や受け入れ方は現地に合ったようにし、メニューもその国に沿うものに変更することは認めている。現地の店が新しいメニューを出すときは、本社で味見をした上での承認が必要で、場合によっては承認されないこともあるという。ただし味に関しては、日本で作った大戸屋独自の料理の味を海外でも堅持する。

バンコク店

高級路線でNY店を黒字化

 ニューヨークに1号店を出したのは2012年で、「ニューヨークに出店することが世界ブランドになる近道になるのではないかとの、先代社長の思いから出店した」という。現在はマンハッタンに4店を構えているが、「長年にわたるコスト削減など経営努力により18年度に初めて黒字化を達成できた。この数年、時間当たりの賃金が急上昇しており、この人件費の値上がりを吸収して利益を出すのは難しい」としみじみ話すのはニューヨーク1号店の店長を経験して昨年まで現地に駐在していた高田知典執行役員だ。

ニューヨークチェルシー店の店内

 その一方で、牛丼の吉野家は2002年にニューヨークに進出したが、12年に撤退することになった。大戸屋は成功して、吉野家はなぜ失敗したか。大戸屋のニューヨーク店のメニューの平均単価は20ドル(チップを入れると2500円)あまりして、日本でのサラリーマン相手の700円程度で食べられる定食とは価格水準が大きな開きがある。

 今年の1月にニューヨークに出張した際に、大戸屋のタイムズスクエア近くの店に入って、ランチメニューで鍋ものを注文して食べてみた。味は日本と同じだったが値段は約20ドルで、日本と比較すると割高感がした。

 店内を見渡すとアジア系の客層が多く、家族連れやサラリーマン仲間などが来て繁盛していた。日系企業にも人気のようで、日本の大戸屋と違って、接待用としても使っている企業も多い。このため客単価を高くしても売り上げは落ちないようで、効率的な経営につながっている。

失敗例多いNY進出

 一方の吉野家は日本と同じ低価格路線を踏襲して、10ドル未満の価格で牛丼を販売したが、売上が思うように伸びず利益も上げられなかった。また、「いきなり!ステーキ」をニューヨークで店舗展開する外食ペッパーフードサービスは今年2月に11店のうち7店を閉めると発表した。17年2月に鳴り物入りでニューヨークに進出したが、高級ステーキ店としてのブランドを浸透させることができず、2年で大幅な縮小を迫られる結果となった。

 これまでに日本の外食チェーンでニューヨークに進出して成功した事例は少ない。大戸屋以外では、3号店まで出しているラーメンの一風堂(本社福岡市)くらいだ。

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