WEDGE REPORT

2019年6月11日

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渡辺道代さん

  今回は、株式会社キューピットワタナベ代表取締役の渡辺道代さんを取材した。同社(東京都昭島市)は、ダイレクトメールの封入・発送を手がける。1987年の創業時から、身体、知的、精神などの障害者や少年院、刑務所などを出所した人を従業員として雇い入れている。

 渡辺さんは「障害者と健常者が一緒に働ける場を作り、両者を結び付けるキューピット役を果たしたい」という思いで、社名をキューピットとした。現在、従業員は21人で、そのうち障害者が1人、出所者が4名。 

 1993年からは、篤志(とくし)面接委員となる。同委員は、刑務所、少年院、婦人補導院など矯正施設の職員とは異なる立場から、広い識見と専門性を持って収容者が人間的に成長するように支援する。渡辺さんは25年以上にわたり、多摩少年院や立川拘置所に月1回訪問し、収容者の面接を行う。府中刑務所には月2回訪問し、就労支援に関する講話などをする。

 2006年に「協力雇用主」制度が設けられてからも、刑務所出所者等を従業員として受け入れ、社会復帰を「就労」の面からサポートする。法務省によると、協力雇用主は、犯罪・非行の前歴のために定職に就くことが容易でない刑務所出所者などを、その事情を理解したうえで雇用し、更生に協力する民間の事業主のこと。現在、全国で約2万社が登録しているが、実際に雇用しているのは少数といわれる。

参考 以下は、法務省のホームページから転載。

 「無職の刑務所出所者等の再犯率は有職の者と比べ約4倍と高く(平成21年から平成25年)、刑務所出所者等の再犯防止のためには就労支援や雇用の確保がとても重要です。法務省では刑務所出所者等に対する就労支援を重要課題の一つとして位置付け、積極的な取組を行うことに併せて、刑務所出所者等を雇用してくださる協力雇用主を募集しています。」

「被害者をこれ以上増やしたくない」

 刑務所を出所した人を現在までに50人以上雇ってきました。その中には、暴力団組員の時に殺人罪で逮捕され、服役していた人もいます。覚せい剤、大麻などの常習犯もいました。万引きや民家で物を盗む窃盗を何度も繰り返し、5∼6回も刑務所に入った人もいます。

 刑務所や少年院に出向き、出所後、弊社で雇うかどうかの面接をします。入社する場合は労働契約を交わしますが、雇用期間に制限を設けてはいません。基本的には、午前9時から午後5時まで週5日、フルタイムで働きます。主に社内で封入・発送の仕事をします。創業時から、仕事をできるだけ細かく分けて、単純な作業になるようにしてきました。誰もがすぐにできるようにしたかったのです。

 刑を終えて、ここで働く人の多くは3年以内に自らの意志で離れ、新たな人生を歩んでいきます。それを、私は「卒業」と呼んでいます。その後の人生は様々ですが、自動車メーカーの工場で正社員として働く男性や、交通事故で足を無くしながらも、定時制の高校を卒業し、鍼灸院の院長になった男性もいました。

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