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2019年6月7日

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アメリカのトランプ政権は、人間の胎児組織を使った医学研究を、政府機関で打ち切ったと発表した。胎児組織の使用はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)やがんなどの治療研究において必要だと主張する科学者たちから、批判の声が上がっている。

一方、人工妊娠中絶に反対する人々は、この決定を歓迎している。

米保健福祉省(HHS)は5日、声明を発表。「受胎から自然死に至るまで、人命の尊厳を掲げることが、トランプ政権における最優先事項の1つ」と説明している。

民間の研究は適用外

これにより、米国立衛生研究所 (NIH) では今後、新たに胎児組織の取得を必要とする研究は行なえなくなる。民間や大学による研究には、この方針は適用されないという。

胎児組織を使う研究のための外部助成金申請に関しては、「倫理規定の観点から、NIHがその研究プロジェクトに資金を提供すべきかどうか」を判断するため、倫理諮問委員会による評価対象になるとしている。

HHSは2018年、人間の胎児組織を使うすべての連邦政府研究の評価を開始し、新たな胎児組織の取得を停止していた。

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政府はまた、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)が行なってきた、人工妊娠中絶で母体から取り出された胎児組織を用いた研究への、年200万ドル(約2億1700万円)の助成打ち切りも発表。6月5日に契約満了となった。

AP通信はある政府高官の話として、今回の決定はNIHのフランシス・コリンズ所長ではなく、ドナルド・トランプ大統領によるもので、少なくとも3件の連邦政府研究と、12件の別の研究に影響が及ぶと報じている。

トランプ大統領は、人工妊娠中絶に反対だと積極的に発言してきている。

胎児組織由来の細胞株は、関節炎から嚢胞性線維症に至る様々な疾患の治療法の開発をはじめ、風疹やアデノウイルス、狂犬病、水痘およびポリオのワクチン開発で役立てられてきた。

科学者は、胎児組織はHIVやジカウイルス症、小児がんなどの治療研究の唯一の方法だと主張している。

米最高裁判所は先月28日、胎児の遺体の扱いをめぐり、流産か中絶かに関わらず、すべての遺体に埋葬あるいは火葬を義務づけるインディアナ州の法律を支持した。

共和党のジェイムズ・ランクフォード上院議員は、「子どもが子どもではなかった時期というのは存在しない」とツイートした。

中絶反対派は賞賛

中絶反対派団体「マーチ・フォー・ライフ」は、「このような研究は、基本的人権を著しく侵害しており、政府には助成金を支払う権利はない」と述べ、今回の決定を賞賛した。

一方、民主党からは批判の声が上がっている。ルイス・フランケル下院議員は、アメリカが「暗黒時代へと逆戻りしている」とツイート。ダイアナ・デゲッティ下院議員は、この措置は「ぞっとする」と述べた。

(英語記事 Trump ends federal foetal tissue research

提供元:https://www.bbc.com/japanese/48551798

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