BBC News

2019年6月10日

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香港で9日、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする条例改正案に反対し、市民ら数十万人がデモ行進をした。

「逃亡犯条例」と呼ばれるこの条例の改正案は、容疑者を中国本土で裁判にかけられるようにする。反対派は、中国政府が香港市民を政治的な理由で狙う恐れがあると批判している。

この日のデモには、主催者発表で約100万人、警察発表で24万人が参加。2014年の民主化運動「雨傘運動」を上回り、香港における過去20年で最大規模のデモとなった。

警官隊と衝突

横断幕やプラカードを手にした参加者たちは、「悪法をつぶせ!」、「中国への引き渡し反対!」などと、うだる暑さの中で数時間にわたって声を張り上げた。

デモ終了後には、数百人の参加者たちが警官隊と衝突。マスクをしたデモ参加者たちは、立法会(議会)の建物に押し入ろうと、設置されていたバリケードを外して放り投げた。これに対し警官隊は、警棒や催涙ガスで鎮圧を図った。

双方にけが人が出て、顔面から出血している人もいた。


「香港の生死がかかっている」

条例改正案の反対派は、中国本土の司法制度には問題が多く、香港市民が危険にさらされるうえ、香港の司法制度の独立が侵されると訴えている。

デモに参加した大学教授、ロッキー・チャン氏(59)は、「これは香港の終わりにつながる、生死がかかった問題だ。だからここに来た」とロイター通信に話した。

18歳の学生アイヴァン・ウォン氏はAFP通信に、「市民の声が聞き入れられていない。この改正案は、国際金融の拠点としての香港の評判だけでなく、司法制度への評判にも影響する。その影響は私の将来にも及ぶ」と述べた。

一方、条例改正案を提出した香港政府は、信仰や政治的立場を理由にした容疑者の引き渡しは防止策が取られているとし、条例改正によって現在の「法の抜け穴」をふさぐことができると主張。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、7月までに改正を実現したい考えを明らかにしている。

この日のデモを受けて、香港政府の報道官は、「改正案は法的根拠がしっかりしたもの」だとし、12日に立法会での審議を再開するとの声明を出した。

台湾で起きた殺人事件がきっかけ

今回の条例改正案が出されたのは、香港の19歳の男が昨年2月、20歳の妊娠中の女性と台湾に旅行中、女性を殺害したとされる事件がきっかけだった。男は逃亡した後、香港に戻った。

台湾の捜査当局が男の身柄を引き渡すよう香港側に求めたところ、香港の当局は台湾との間に引き渡し協定が無いとして、この要求を拒否した。香港は現在、イギリスやアメリカなど20カ国と引き渡し協定を結んでいるが、中国政府とは結んでいない。

台湾政府は引き続き、男の身柄引き渡しを香港側に求めると表明している。ただ、現在香港で検討されている条例改正の動きとは別だとしている。

凶悪事件の容疑者が対象

条例が改正されれば、中国本土や台湾、マカオの捜査当局は、香港に対して、殺人や強姦など凶悪犯罪事件の容疑者の身柄引き渡しを要求できるようになる。

引き渡し要求については、事件ごとに引き渡しの可否が判断される。香港政府の関係者によると、最終判断は香港の裁判所がするという。また、政治的、宗教的な犯罪の容疑者は引き渡しの対象にならないという。

香港政府は条例改正案への理解を得ようと、引き渡しの対象を、7年以上の刑となる犯罪の容疑者に限定するなどの譲歩案を示してきた。

(英語記事 Huge Hong Kong protest against extradition bill

提供元:https://www.bbc.com/japanese/48578227

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