2024年4月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年1月4日

 韓寒はさらに26日、「要自由」(自由を求める)を発表。ここで一転、「2012年は文化、出版、報道、映画に対する規制を緩和してほしい」と政府に求め、「若者が恐れることなく革命や改革、民主を討論し、国家の前途を憂い、国を自分の体の一部だと見るよう望む。政治は危険なものではない」と結んだ。

 それでも28日付環球時報は「韓寒の一連のブログは、社会世論の関心と参加を呼び起こしたが、これは良いことだ」と歓迎したのだ。

艾未未VS環球時報 2012年の中国の行方は?

 中国で政治的に敏感なテーマとされる革命、民主や自由などの問題をめぐっては環球時報や同紙・胡錫進編集長の微博が、世論をリードするという構図が既にできあがっている。

 さらに言えば、ツイッターなどで共産党批判を展開し、脱税容疑に問われた艾未未と、環球時報・胡錫進には「因縁」があり、お互いにけん制し合っているのだ。

 艾は胡らの「五毛党」的な論調を敵視しているだけではない。艾が脱税に問われた後の11月中旬~下旬、同紙は「艾未未たちの淘汰は社会の潮流だ」など、艾未未を批判する3編の社説や論評を掲載。これに対して艾未未は、胡無進らの携帯電話番号をツイッターで公開し、反撃に出たのだ。「共産党」が主導する世論誘導に対する改革派知識人や民主活動家らの反発は今までになく高まり、激しい「口撃」合戦が展開されているのが中国ネット世界の現実である。

 中国では「烏坎事件」のように民の「革命」によって社会を揺るがす事態が今年も頻発することが予想される。「翻」が巻き起こる社会の中で、「穏」を押しつけようとする共産党・政府による封じ込めが限界に達した時、社会は「変革」に向けて一歩前進する、との期待は高まっている。「官」と「民」のせめぎ合いの中で、ネット民意が果たす役割はますます高まることだけは間違いない。


◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
※8月より、新たに以下の4名の執筆者に加わっていただきました。
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学准教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜


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