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2019年6月18日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 

ハメネイ氏と会談した安倍首相(Office of the Iranian Supreme Leader/AP/アフロ)

 安倍首相のイラン訪問中に、日本などのタンカーがホルムズ海峡近くで攻撃された事件の〝犯人〟は、いまだ判明していない。米国はイランの関与を主張、イランはこれに強く反発している。だれの犯行であるにせよ、米・イラン緊張緩和への日本の外交努力に水が差されたことは疑うべくもない。

 

 タンカー攻撃がなかったら、仲介工作は成功だったのか。首相と会談したハメネイ師、見守っていたトランプ米大統領の発言などをみる限り、そうとは思えない。首相の努力に期待しながら、あとになって〝はしごを外した〟という意地の悪い見方がぴったりする。

タンカー攻撃で悔やまれる結果に

 国華産業(本社・東京)が運航する「KOKUKA COURAGEOUS」など2隻のタンカーがエネルギー輸送の生命線といわれるホルムズ海峡で攻撃されたのは、安倍首相がハメネイ師と会談した6月13日。「吸着型の爆発物」か「飛来物」によるとみられている。

 当時の状況は内外のメディアで大きく報じられているので、繰り返す必要はなかろうが、トランプ米大統領は14日、「イランのやったことだ」と断定、強く非難した。イランのザリフ外相は「事実や状況に基づく証拠はない」と反発、国連のグテレス事務総長は「独立した団体による調査」の必要性に言及した。一方で、イランの信用を損ねる目的で、同国内の反政府テロ組織が関与したとの見方もとりざたされている。

 自らイランで仲介工作を行っている最中に襲撃事件が起き、米国とイランの関係がいっそう緊張の度を加えただけに、安倍首相にとってはタイミングが悪く、悔やまれる結果となった。もっとも、米、イランはそれぞれ「(イランは)安倍首相を侮辱した」(ポンペオ米国務長官)、「米国は証拠のない主張をして、安倍訪問を含む外交努力を破壊した」(イランのザリフ外相)と、いすれも首相のメンツがつぶされてしまったことへの気遣いをみせてはいる。

ハメネイ談話、首相努力に冷や水

 タンカー襲撃がなかったとして、仲介工作自体をどう分析、評価すべきか。結果をみる限り、首相はイラン、米国双方からハシゴをはずされてしまったようにみえる。

 イランの最高指導者、ハメネイ師は首相との会談で「核兵器の製造も保有も使用もしない。その意図はないし、すべきでもない」と非核化への決意を強調はした。しかし、首相が訴えた米国との直接対話については、会談後のツイッターで明確に拒否、米国を口を極めて罵った。

 「安倍首相の善意は疑わないが、大統領はメッセージを交換するに価する相手ではない。彼に応える理由はないし、応えるつもりもない」、イランの体制転換を求めないというトランプ大統領の発言についても「体制転換など問題ではない。もし彼らががそれをたくらんだとしても、決して成功しないだろう」と一蹴した。そのうえで、日本に対しても「アジアの重要な国だ。もし彼らがイランとの関係を拡大しようとするなら、彼ら自身の堅い決意を示すべきだ」と米国の制裁に同調することをやめるよう注文をつけた。

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