WEDGE REPORT

2019年7月1日

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田中淳夫 (たなか・あつお)

ジャーナリスト

静岡大学農学部卒業。出版社、新聞社を経て、主に林業を中心に取材・執筆。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

 宮崎県南部の国富(くにとみ)町。田園風景の中に異様な光景が見える。スギ木立を一列だけ残して、その裏側は丸裸なのだ。表土は削れ、数日前の雨のせいか泥沼と化している。丸太の山がいくつも放置されていた。そんな斜面を登って尾根に立つと、すさまじい光景が目に入った。

国富町の「盗伐」現場。補助金で購入した重機で無断伐採が行われていた(WEDGE)

 赤茶けた土が剥(む)き出しの山が遠くまで広がり、谷はV字に削れ、枝葉で埋められている。切り株も割けて乱暴な伐(き)り方なのが一目瞭然。流れ出た土砂は、麓の溜(た)め池や農地を埋めていた。

 「昨年9月に勝手に伐採が始まったんです。所有者が気づいて警察を呼んで止めたのですが、翌日行ったらまた伐採していたそうです」

 案内してくれた宮崎県盗伐被害者の会の海老原裕美会長は語る。

盗伐された山林が崩れ、田んぼと水路が埋まった (WEDGE)

 その後、この山の伐採届は受理されていないことがわかった。伐採業者は誤伐を主張したが、地籍調査も済んで尾根筋には数メートル間隔で境界線を示すコンクリートの杭(くい)が並ぶ。これを見落とすことはあり得ない。外側のスギ一列を残したのも外から見えにくくするためだろう。

 こんな事件が宮崎県で相次ぐ。海老原会長も盗伐被害を受けた一人だ。

 「宮崎市内の母名義の山が勝手に伐られたと気づいたのは2016年の8月。墓参りの帰りに寄ったら山に木がないんです。そこで情報開示請求したら、15年前に死んだ父の名で伐採届が出ていた。有印私文書偽造で告発したのに不起訴になりました。同じような経験者がたくさんいたので、盗伐被害者の会を結成したんです」

 17年9月に14世帯で発足した会は、今や85世帯に。被害は会員だけで約3万本になるが、氷山の一角だという。

 盗伐後に放置され、赤茶けた土が剥き出しの山(WEDGE)

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