2024年4月25日(木)

WEDGE REPORT

2019年6月20日

朝鮮戦争後にも続いた「拉北」
しかし、謝罪も賠償も求めない韓国

 また、朝鮮戦争(1950~1953)以降に北朝鮮に「連れていかれた」韓国人も存在する、彼らは「戦後拉北者」と呼ばれるが、認められている人数だけで3000人を超える。北朝鮮は主に海上で操業中の漁師を拉致するのだが、連れていかれた3835名中516人は今も戻ることができずにいる。北朝鮮は拉致した人たちを体制宣伝に利用したり、対南工作員として利用している。

 だがどうしたことだか、韓国は彼らを放置している。送還、補償、謝罪など、何一つ要求しない。左派政府だけでなく、歴代の右派政府も同様だった。彼らを棄てたのだ。むしろ、韓国の拉北被害者たちに関心を寄せているのは、連携を図っている日本の拉致被害者家族や支援団体だ。

 学校教育でもこういった事実は教えない。朝鮮戦争の最中に連れていかれた10万人の自国民、戦後連れていかれたまま戻れずにいる500人余りの自国民、その存在すらも若い学生たちは知らずにいるのだ。

 一方、日本に対しては募集による渡日、それも年齢や学力を偽ってまで志願した者についても「強制連行」、「事実上の強制」だという名目で、マスコミや政府が前に立ち謝罪を要求し、学校でも繰り返し強調し、学生たちに日本に対する反感を植えつける。あまりにも対照的な姿だ。

 このダブルスタンダード、つまり北朝鮮に対する姿勢と、日本に対する姿勢の差異。この不均衡と偏りこそ、韓国が日本に要求する「賠償と謝罪」問題の本質を示しているのかもしれない。韓国が言う「賠償と謝罪」とは、最終的に人権や記憶すべき歴史の問題ではなく、日本からの金銭的利益の誘導し、同時に恨みを発散している八つ当たりなのだ。しかもその作用は「同族」に対しては起きないという御都合主義的で、強い民族主義的な傾向を持つ。

 こんなふうに言えば行き過ぎた表現だと思う人もいるかもしれない。だが少なくとも北朝鮮の強制連行に対し、韓国が非難の声をあげない限り、あながち間違った考えだとも言い切れないだろう。

 昨今の日韓の情勢を見る限り、韓国は北の強制連行や拉致問題は棚に上げておいて、日本への批判、要求に集中すると思われる。しかし、その行動は実は本当の強制連行問題、つまり北朝鮮による非行を忘れたい、隠したい気持ちの表れではないかと思う。

  
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