中東を読み解く

2019年6月22日

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 トランプ米大統領は21日早朝のツイートで、イランが米軍の無人偵察機を撃墜した報復として、同国への報復攻撃をいったんは命じたが、150人の犠牲者が出るとの報告を受け、攻撃10分前に中止したことを明らかにした。米軍の航空機や艦船が攻撃態勢に入っていた中での中止命令。攻撃が実施されていれば、戦争に発展した可能性もあり、ギリギリの決断だった。

ホワイトハウス前で反戦を呼び掛ける人々(AP/AFLO)

無人機撃墜に見合わないと決断

 米メディアによると、トランプ政権の国家安全保障チームは20日、米軍の無人偵察機グローバルホークがホルムズ海峡上空の“国際空域”でイランの地対空ミサイルの攻撃を受けて撃墜されたことへの報復対応を協議した。この中で、対イラン強硬派のポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)に加え、ハスペル中央情報局(CIA)長官の3人がピンポイントの報復攻撃を主張した。

 これに対し、国防総省の幹部は攻撃が本格的な戦争に発展し、米軍将兵に犠牲が出ることを懸念、反対した。トランプ大統領は、いったんは強硬派の意見に同意し、報復攻撃を承認した。攻撃は21日夜明け前に実施されることが決まった。大統領がツイッターで明らかにしたところによると、イランのレーダー基地やミサイル発射台など3カ所が標的だった。

 しかし、大統領は1人の将軍から「150人の死者が出る」との報告を受け、無人機の撃墜と見合わないとして、攻撃の中止を決めた。中止命令が出たのは攻撃開始の10分前だった。もし、攻撃が敢行されていれば、イラン側が報復に出た可能性があり、ペルシャ湾を舞台に本格的な戦争に拡大したかもしれない。攻撃が中止された時には、複数の航空機が出撃ずみで、また艦船も攻撃可能海域まで到着していたという。

 無人機撃墜の後、原油価格は6%程度跳ね上がった。しかし。仮にイランへの攻撃が行われていれば、さらに価格が急騰したことは間違いなく、来週の大阪での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に、世界経済に大きな悪影響が出ることになっただろう。輸入原油の約85%をペルシャ湾岸に依存する日本にとっては相当の打撃だったはずだ。

 トランプ大統領はツイートに先立ち、ホワイトハウスで記者団の質問に答え、無人機が撃墜された場所が明らかに公海上の国際空域だったことを強調、「イランは大きな過ちを犯した」と断じた。しかし大統領はその一方で、「イランの将官級の誰かが間違いを犯したのではないか」とも述べ、イランと本格的な戦争を回避したいとの思惑をにじませた。

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