2024年4月25日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年6月27日

追加関税の「政治的道具化」

 16年米大統領選挙におけるトランプ陣営とロシア政府との共謀ないしトランプ大統領の司法妨害に関するロシア疑惑の捜査を2年半にわたって実施してきたロバート・モラー特別検察官が5月29日、初めて公の場に現れ、記者会見を行いました。当然ですが、米国民の関心はこの記者会見にありました。

ドナルド・トランプ・ジュニア氏(海野撮影@フロリダ州オーランド)

 そこでトランプ大統領は、米国民の目をそらすために、「メキシコ政府が真剣に不法移民対策をとるように、メキシコからの輸入品に5%の追加関税をかけ、最大で25%まで徐々に上げていく」と発表しました。同大統領の狙い通り、この発表によって米国民の関心が分散されました。

 結局、メキシコ政府が中米諸国から米国を目指す移民を阻止するために、グアテマラ国境に6000人の国家警備隊を派遣し、国境を強化することに合意しました。トランプ大統領は即座に、メキシコからの輸入品に対する「関税は一時停止する」とツイッターに投稿し、成果をアピールして「勝利宣言」を行いました。

 そのうえで、野党民主党のナンシー・ペロシ下院議長及び同党の議員は移民対策で「何もできない」というメッセージを発信しました。つまり、トランプ大統領は追加関税を「政治的道具」として使ったワケです。

 フロリダ州オーランドで6月18日に開催されたトランプ大統領の再選出馬表明の集会で、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏は約2万人の支持者に向かって「1回か2回のツイッターでメキシコ政府と合意できた」と主張して、メキシコに対する「勝利」を彼らと祝うとともに、トランプ大統領の「ツイッター外交」をアピールしました。

 ただ中国との貿易摩擦と同様、トランプ大統領はメキシコからの不法移民問題も大統領選挙の争点の中心に置き、来年11月3日の投票日まで「反メキシコの支持者」をつなぎとめていくでしょう。


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